和歌山県の建築動向について話し合いました。話の前提となる令和元年度の着工新設住宅戸数は次の通りです。
持ち家は2,984戸、貸家が1,337戸、分譲マンションで330戸となっています。いずれも対前年度比で上回っていて住宅着工は堅調です。しかし今回、今年1月から3月までは新型コロナウイルスの影響が出ることを懸念しています。
住宅着工が伸び悩むと付随する動産に影響があります。例えば電気製品や家具など新しい住宅で揃えるべきものが売れなくなりますから、今後の景気に影響を及ぼすことになります。
住宅の着工数は景気の先行きを見るうえで大事な指標ですから注目しているのですが、今年前半の実績が未確定のため現時点で見極めることはできません。しかし建築現場からの話を聞く限りにおいては「現場は止まっている」という感覚があります。
令和2年3月の時点において、建築に必要な部材で中国からの輸入に影響が出ている部品は次のものです。温水洗浄機付きトイレ、IHクッキングヒーター、そして食器洗い乾燥機の三品目です。
住宅、マンションなどでこれらの機器が届かないことから竣工があげられず、完了検査が受けられない物件もあります。そうなると建築主に物件の引き渡しができないので、お金の支払いに至りません。住宅メーカーや工務店は予定していた支払いがなくなるので、運転資金が厳しくなっているところがあります。年度末にはこのような状況が発生していて、今もこの事態が続いている現場もあり、建築会社も厳しさを増している状況だと認識しています。
国土交通省は、今年2月に国直轄工事などの一時停止を通知していますが、和歌山県の場合、公共工事に関しては受けた企業の意思を確認し、働く人の健康管理や安全性などを確保しながら、事業を継続する意思があれば竣工するまで中止にしないで進めることを認めていますから、公共工事で資金繰りが悪化する事例はないと思っています。但し民間物件では、前述のような事態が発生していることも聞いています。
今回のようなパンデミックが発生した場合、生活防衛のため支出は控えることになり、食料やら日用品などの生活関連用品に資金を充てることになります。一般的に住宅や自動車、電気製品など、今すぐ生活に必要とならないものへの支出は控えることになります。
ですから、住宅着工数は減少すると予測できますが、そうなると域内経済に影響を及ぼすことになります。
話を戻します。多くの人は経済危機に備えて資金を蓄える傾向に向かうと予想できますから、今年の建築需要は落ち込むと思われます。顕在化するのは令和2年度の下期あたりからだと思いますが、そうなると景気がさらに後退することになります。建築戸数は今後の景気を予測するデータの一つですから、もし本年度下期に着工数が減少すれば、他の業種にも影響を与えることになり、なお一層、景気後退に向かうことになります。
景気は企業の設備投資と、現在であればインバウンド観光客の消費などが大きな要素になりますが、どちらも急速な回復への期待は薄いと思います。企業の内部留保が減少することから設備投資に向かわせる資金は乏しくなり、否、それ以前に市場が回復しないことには設備投資に向かうことはあり得ません。
また外国からの観光客が元の水準まで戻るのは、相当先のことになると予測できます。早くて、来年東京オリンピックが開催されるとすれば、その時以降になると思いますから、インバウンド観光客の増加にも期待はできません。
和歌山県のような地方都市の場合、恐らく民間案件が動かないので、公共工事の前倒しや予算増などの措置を行い、仕事を創り出すことが必要です。
まずは今以上に感染者を増やさないことに尽きますが、事態が収束した後の公共事業についても備えておくことが必要だと考えています。