和歌山市の商店街である「ぶらくり丁」の日曜日は人通りが少なく、外出の自粛を心掛けてくれているように感じます。ただ「人が集まっていた」という場所もあり、なるべく人との接触を少なくして欲しいと思います。
この商店街でも他の商店街と同じように、新型コロナウイルスに対応しようとしていますが妙案はありません。地元商店街の特長は、「お客さんと顔を合わせ、コミュニケーションを大事にする商売」ですから、お客さんが減少することは売り上げの減少に直結するものです。尤も、昔から変わらない商売の方法は時代の流れに乗っていないことは理解しているのですが「会話とふれあい」を大事にしたいという思いが強く、このスタイルを変えていないようです。
しかし急激に自粛の影響が出ているので、これからの商店街のあり方について考え直しているお店もあります。その選択肢は多くはありません。
- この機会に廃業すること。
- 商店街の構造を変えて生き残りを図ること。
「今からお店を維持するための借金をしたくない」と言う考えが強ければ、廃業を選択することもあり得ます。事実、お店のひとつは閉店する意思を固めたことを聞きました。
しかし「和歌山市の伝統的な商店街を次の時代にも残したい」と思う店主たちは、再建の方法を検討しています。考え方は「自分のお店だけが残ったとしても商店街として存在理由がないので、商店街全体を変えてしまうこと」を目指す考え方もあります。
小売店という形態では時代を超えて残れないことは分かっているので、お城に隣接する居住地域であり、そこには医療と福祉施設が充実しているまち。そして行政と生活必需品のお店が整っているまちであることです。そして防災拠点都市の考え方に基づいた都市設計となっていることです。小売店が集まっている商店街というだけで集客することはできませんし、観光客を集めることも難しいことです。
ただ和歌山市にとって「ぶらくり丁」が伝統的な商売のまちであり、受け継がれているまちの伝統を次の時代に残すことが必要と考えるなら、商店街と行政との連携を図っていくことになります。「他と同じような商店街」と考えるのであれば、もしかしたら伝統的な商店街として次の時代まで残らないこともあり得ます。
その場合、事業を継続するお店と地元銀行、そして駐車場がある商店街ということになります。
極めて集客することは難しい商店街の姿です。
商店街の方と以上のような協議を行いました。「現状のまま残ることは可能性が低いので、商店街のあり方を変えなくてはいけないと思います。この先も和歌山市にとって『ぶらくり丁』が必要だと思えるような姿に変えなければなりません。和歌山市の中心部にある商店街であり、城下町の商店街ですから、時代を超えて生き続けるために構想と投資が必要」だということも話し合いました。
かつて「ぶらくり丁」に行くと言えば「街に行く」ことであり、楽しみでワクワクしたものでした。子どもにとって、おもちゃ屋、食堂、映画館、本屋などが集まっていて、他の地域では見つからないものがありました。バスに乗って本町二丁目で降り「ぶらくり丁」を歩いて、突き当りに見えてくる「丸正百貨店」が見え始めるとワクワクして急ぎ足になったものです。子どもにとって年に数回の体験でした。昭和30年代から40年代生まれの和歌山市の子ども達は、同じような思い出があると思います。他にないもの、珍しいものがあった場所ですが、今の時代、そんな価値のある商店街はどこにもありません。
同じスタイルでの再生はできないのは明らかなので、住居としての安全と安心、そして衛生的で健康管理が図れた日常がある価値。そんな居住地域が求められるのではないかと思います。