和歌山市立博物館で開催中の特集展示「平成30年度寄贈資料展」を鑑賞してきました。知人の大西勝さんが和歌山市に寄贈した、和歌山県の偉人である津田出氏の書などの史料が多数展示されているので訪れたものです。
テーマは「津田出と明治初期の和歌山」で、津田出氏は明治時代の和歌山藩の改革を行った中心人物です。津田出氏は、明治2年に陸奥宗光伯と共に藩政改革を実行した人物で、プロイセンの下士官、カール・ケッペン氏を招いてのドイツ式の軍政改革は、その後の日本陸軍の近代化にも大きく貢献することになったほどです。
このように和歌山藩の藩政改革の立役者の一人である津田出氏の功績は、和歌山藩の藩政改革を成功させ明治4年の廃藩置県と明治6年の徴兵令に影響を与えたことにあります。
津田出氏の明治時代の功績に関しては「和歌山県ふるさとアーカイブ」に記されているので、以下に記します。
「津田出は、明治2年藩政改革の綱領を発表、以前なしえなかった改革を推し進めていく。藩士の俸禄を大幅に削減するとともに、徴兵制を施行、近代的な軍隊の育成をめざして、初代戍営都督に就任した。
ドイツ人の下士官カール・ケッペンを招いてプロシア式軍事教練を導入し、当時としては全国最大級である2万人規模の精鋭軍を築き上げた。また、近代的な軍隊の整備に伴って関連産業が発達、綿ネルや皮革などが和歌山の地場産業として成長することとなった。四民皆兵の徴兵制を実現したこの藩政改革は、近代国家をめざす明治政府のモデルとして大きな影響を与え、明治4年に実施された廃藩置県の先例となるものであった。
改革の手腕を評価された出は新政府に採用され、明治4年に大蔵少輔、陸軍少将などを歴任、明治23年には貴族院議員に勅選されたが、薩長藩閥政府の中ではその力量を振るうことは困難であった」と紹介されています。
偉人のことを知る方法として、本物に触れる方法があります。今回は自筆の書が多数展示されていて、和歌山市で生まれその時代を生きた人物であることを感じられるので、歴史上の人物が身近になります。そして漢字だけで書かれた書なので展示物を解読することはできませんが、その時、本人が書いたものであることを想像できれば、私達と同じように考え、行動し、悩みながら時代を切り開こうとしていたことを思うことができます。
この想像力があれば、生きることは「困難があっても志を持って行動すること」だと感じることは可能です。どの時代でも困難があり、その時代を生きた人が行動することで困難を乗り越えてきたのです。昭和、平成、そして令和の時代も同じだと感じられます。
歴史を学ぶこと、偉人の功績を知ることは、現代を生きるための知恵を授かることだと思います。社会が単純で簡単な時代、生きやすい時代などはなかったと思います。どの時代も困難があり人の叡智によって乗り越えてきたのです。歴史の出来事と偉人の生き方から学べることはたくさんあります。だから本物に触れる機会があれば、それを観る機会にしたいものです。
今回、大西勝さんが和歌山市に寄贈してくれたお陰で、私達は自筆の書などの貴重な史料を観ることができます。和歌山市立博物館で開催中ですから、故郷の偉人のことを知るためにも鑑賞いただけると幸いです。
タイヤがすり減っていたのでタイヤ交換を勧められていたのですが、なかなか機会がなくて今日になっていました。交換している時間、この会社の社長と懇談しました。津田出氏の本物の書が和歌山市立博物館で展示されている話をしたところ、外国で暮らした経験から「アメリカやヨーロッパでは偽物が多く出回っているので注意が必要です。日本文化と違うのです」という話を聞かせてくれました。
これらの国で偽物が多いのは「本物を盗まれることを防止するため、本物そっくりの偽物を作りそれを本物として展示すること」を行ってきた歴史があるからです。公的な施設で作品が盗まれることは日本では余り例がありませんが、アメリカやヨーロッパの国々では起こり得たことだそうです。
そこで美術館や展示会場には本物に似せた偽物を展示することは珍しくないそうです。時には偽物の偽物を展示することもあったようで、歴史的に貴重な作品や手紙などは偽物がたくさん作られた歴史があると聞きました。偽物作りにもその国の歴史や文化があったのです。国や時代が違うと、同じ価値で計ることはできないこともあります。
タイヤ交換の時間が、知識を得るための楽しい話になりました。