平成7年1月17日に発生した阪神淡路大震災から、もうすぐ25年目を迎えます。大震災の記憶を風化させないため「阪神淡路大震災に何を学ぶか」をテーマとして話し合いを行いました。毎年、この時期に講演会やシンポジウムを開催しているもので、今回は大震災を体験した九度山町議会議員の西山隆さんに和歌山ビッグ愛に来ていただき、座談会形式でこのテーマについて話し合ったものです。座談会には西山隆さん、臼井康浩さん、そして僕の三人で行いました。
災害発生時はラジオの情報が大切なこと。阪神淡路大震災を仁川で体験した西山さんは、避難場所にはラジオを携帯していました。しかしラジオ携帯で避難してきた人は、ほとんどいなかったようです。そのため西山さんがラジオで情報を得ようとしたところ、避難してきた方々が情報を求めてきたのです。
避難所に避難すると次の行動につなげるための情報が必要となるのでラジオは必須です。しかも、地元情報を早く得られるコミュニティエフエム放送を聴くことのできるラジオは役立ちます。 できれはラジオと無線機を用意しておけばベストです。
行政が開設を予定している臨時災害エフエム局は人材がないと思われるため、非常時には役立たないと思います。それよりも地元コミュニティエフエム局と、災害発生時の放送協定を結ぶことで、ラジオ局の力を借りる方が良いと思います。ラジオは無線なので電柱の状況に関係なく聴くことができます。
人は温かいものを飲食すると落ち着きます。避難所では温かい飲み物、食べ物を用意しておくことが必要です。温かいものを得ると人は落ち着いた行動をすることができるのです。そこで小さなコミュニティができるので、そのコミュニティで結束すること、情報を共有することが避難所生活での力になります。大きな集団は情報伝達やコミュケーションが不足しますから、小さなコミュニティ単位で行動することが大事なことです。
行政機関は災害時に走行できるジープや4WDなどの車を備え付けておく必要があります。街にガラスが飛散しているので公用車では持ちません。もしくはパンクをしないタイヤを履かせた公用車を備えておくことが必要となります。
人はいざという時に、人を助けようと行動します。これは人が持っている良心による行動で、スーパーマンになるのです。しかし時と場合によっては、自分の命を優先させることも重要なことです。
現場での救急の優先順位を判断することを「トリアージ」と言いますが、その考えに基づいた行動が命を救います。阪神淡路大震災の時に活動した消防士の言葉です。
「一人でも多くの命を救いたい。弐度とあの時の悔しさを味わいたくない。時間の重みを知った今なら、迷わず多くの生存者を選ぶ」と発言しています。がれきの下敷きになった死者を救助するよりも生存者の救助を優先させるということです。非情な判断だと言われることもあると思いますが、それが命を救うことにつながる現場の判断となります。
時に人はスーパーマンにならなくても良いのです。生存者救出のタイムリミットは72時間とされているので、「トリアージ」の考え方での判断と行動を優先したいものです。
大掛かりな避難訓練を一年に一度行うのではなくて、「ちょこちょこ」と少人数で良いので小さな訓練をすることが効果的です。ロープを結ぶ訓練、火を起こす訓練など、救助が来るまでの生きるための訓練をすることが大切なことです。
空き家は被災時に問題となります。管理していない空き家は確実に倒壊するので、避難行動の障害となります。家屋倒壊、塀の倒壊、ガラスの飛散など避難の妨げとなります。今から空き家の取り壊しなど対策を実行することが、やるべき災害対策です。
ほとんどの橋は崩壊します。避難所までの移動は橋を避けるように道順を考えておくべきです。指定されている避難所に行くまでに橋がある場合、その道は通行できないと考えて備えておくことが大事です。
失敗を恐れずに体験すること。失敗を恐れるあまり行動できない人がいます。実体験をしていない人は社会で力強く生き抜くことはできません。「でも、だって、どうせ」の三つのDの言葉を口癖にすることは禁物です。
小さなことでも結果を出すことが大事です。結果を出せない場合、プロセスを変えることを考えるべきです。結果を出せないプロセスを何度繰り返したとしても結果は出ません。結果が出なければプロセスを変える。これが考えるべきことです。
約2時間の座談会で学べたことはたくさんありました。特に被災した体験を聞いたことで、県の対策として実施すべきことが浮かび上がりました。
お招きをいただいたふたつの懇親会に参加して、皆さんと挨拶を交わし交流を深めました。
一つの会での会長挨拶の中に「継続することが大事なことです。今年も小さな力でも継続できるようにしたいと思います。
もうひとつは、助けることは自分が助けられることだということです。人を助けることは損なことではなくて、自分が助けられることを意識して行動するようにしましょう」とありました。この考え方は今年の会の目標となるものです。