活動報告・レポート
2020年1月2日(木)
消費性向

創業してから50年に及んで大阪市、京都市、奈良市などで店舗展開をしている経営者の方と会う機会をいただき懇談した時のことです。

「私は長く商いをしているけれど、これほど物が売れない時代は初めてです。若い人を中心に消費しない傾向にあることと、インターネットで物を買っていることが原因です。商売で店舗を構える時は、立地条件が良い場所、またはその番地に店舗を構えることでイメージが高まる場所を選んでいます。大阪であれば阪急百貨店周辺や難波であればなんばCITY周辺の立地条件が信頼でありブランド力になっていたのです。

ところがそんな場所に店舗を構えることは賃料が高い、人件費が高いなど経費負担が嵩むことを意味しています。消費が旺盛な頃はそれでも良かったのですが、消費が落ち込んでいる現在、都会の中心地の賃料や人件費は負担になっています。インターネットでは土地代も人件費もいらないので実際の店舗を構えているところより競争力は上回っています。だから店舗に買い物に来てくれる人は極端に減少しています。このままでは店舗を維持できなくなります。

実際、ブランド力のあるアパレルのお店でさえ、全国において数百店規模で閉店しています。

情報社会なので仕方のないことですが、こんな状況が続けば都心から店舗はなくなってしまいます。物が売れない時代において、家賃と人件費を支払って赤字にならなければ維持できるという状況にあると思います。長く商売を続けているので、現状は厳しくても撤退はしませんが、新しい店舗を構えて商売をやろうという人は極めて少ないと思います」と話してくれました。

大阪市内でさえこんな状況ですから、地方都市においてはもっと新規の店舗出店は少なくなっています。物が売れない時代ですから、事業を継続するか撤退するか悩ましい時を迎えているようです。実態として、消費が落ち込んでいることを前提とした経済対策が必要だということです。

ところでこの経営者は毎日欠かさずに店舗、つまり現場を周っています。何か所もあるのですが、必ず全ての店舗に行っていることを聞きました。店長の話を聞く、お客さんの動向を確認する、お客さんと会話を交わすことを目的としているのです。「現場に立たなければ分からないことがあります」とうことで毎日、店舗を訪れているのです。

ある店長は「オーナーが来てくれると、来店してくれたお客さんに欠かさず挨拶をしてくれるのでお客さんが付いてきてくれます。オーナーがコミュニケーションを取ってくれるので私達もお客さんとの接し方を学んでいますし、売り上げを維持することができています」と伝えてくれました。

社会はコミュニケーションで成り立っていますから、それができているお店はお客さんが来てくれますし、コミュニケーションのないお店は継続できなくなります。商品の差や価格の差がなくなっている時代において、お客さんに選ばれるのはコミュニケーション力と信頼性になります。

20歳代から起業して事業を継続していること、そして50年が経過した時に新しい分野で事業を始めても成功を収めている。そんな凄い経営者がいます。

コミュニケーション力、現場主義、親切で謙虚、そして従業員さんを大切にすること。そんなことが力になっていることが分かります。

もう一つ大切なことがあります。それは先祖が人のために尽くしてきたことです。人のために尽くすことは徳を積むことです。先祖が人のために尽くしてきた人だったことから「私は徳をいただいている」と話してくれたように、徳をいただいていることを分かっているのです。徳は一朝で得られるものではありません。徳を得るには人のために尽くすことなので毎日、貯金をするようなものです。貯金をするには時間がかかるように、徳を得るには長い時間を要するのです。

時間をかけて得られるものは価値がある。そんなことを理解して行動していることが凄いと思います。先祖から徳をいただき、自らも徳を積み重ねている。徳が大きくなるに連れて事業も大きく育っています。