活動報告・レポート
2019年12月4日(水)
宇宙教育談義

和歌山県にある宇宙に関するフィールドや、これまでの「宇宙教育」の実績によって全国から、そして世界から教育関係者や学生を呼び込むことは可能で、交流人口の増加を目指すことができます。

和歌山県には串本町にロケット射場が建設予定ですし、紀美野町にはみさと天文台があります。そして和歌山市加太にも和歌山大学のモデルロケット用の射場があり、毎年、ここで「缶サット甲子園和歌山大会」や「ロケット甲子園」が開催されています。

このように施設や宇宙教育に取り組んできた実績から宇宙に最も近いのが和歌山県だと思っています。

そして交流人口を増やすことは人材交流の機会になることを意味していますから、和歌山県に宇宙に関する知見、人材が集まることになります。何よりも「宇宙教育」に取り組んできた経緯がありますし、天文台など実際のフィールドがあることが強みなのです。

特に宇宙教育を通じた人材育成は和歌山県が先進県であり、「缶サット甲子園」に出場した学生たちが宇宙を目指して大学に進学し、その後、JAXAやメーカー、民間ロケット会社などに勤務している状況もあることを聞きました。

当たり前のことですが宇宙を目指す子ども達は、大学に進学してから宇宙の仕事を目指すのではなくて、中学生や高校生の時から宇宙を目指しているそうです。

野球選手を目指す子ども達は大学に行ってからプロ野球目指すことはない訳で、甲子園を目指して高校野球をすることに似ています。高校生の時に科学クラブなどに入り、「缶サット甲子園」を目指すなどしているのです。

宇宙を目指す生徒がたくさんいることも知り、今まで以上に子ども達に「宇宙教育」の機会を提供することが可能性を広げることになると思いました。

和歌山大学ではそんな人材育成を目指していますから、地元の中学生や高校生が宇宙に興味があれば学べる環境は整っています。

ここで教育に関する興味深い話がありました。

従来の教育課程は、「興味喚起→専門教育→巨大プロジェクト経験」という過程を踏んでいました。

ところが現在必要とされている目指すべき教育課程は、次のような過程となっています。

「興味喚起→専門教育・プロジェクト経験・社会参加経験→巨大プロジェクト経験・社会変革経験」という過程です。

つまりこれまで社会人になって経験していた社会参加経験を教育課程で経験させようということです。現代社会は個人としての専門家を必要としているのに加えて、集団として協力して力を発揮できるプロジェクトや問題対応型の人材を求めているからです。

宇宙教育における共同実験による人材育成の狙いはここにあります。

  • ステップ1。打ち上げメンバーとして学ぶこと。プロジェクトの一員として、チームによる仕事に参加し、プロジェクト推進方法を学びます。
  • ステップ2。プロジェクトの目標設定とリーダーとして自プロジェクトの進め方、取りまとめ方を学びます。
  • ステップ3。各プロジェクト間の調整、自治体や関係者との調整を通じて、ステークホルダーとの調整能力を育成します。周囲が安心できる実験環境整備を通じて、管理能力、調整能力を育成します。

この三段階のステップを経ることによってリーダーとしての能力を身に付けていく学習を、つまり宇宙を通じた共同実験で学ぶ、そして経験させるのです。

これは従来から必要とされている「個人の能力」、次に「リーダーとしての能力」は当然のこと、社会で巨大プロジェクトを推進する時に必ず必要となる組織外の人との間の「調整能力」を学ぶことを求めているのです。

自分がやりたいからできるのではなくて、みんなが望んでいるからやれることに気づかせることが大切です。自分がやりたいことがあれば、周囲の人を説得し応援してくれる関係を築けることが、組織や社会が求めている人材なのです。人のつながりを大切にできる人材は国際協力にも貢献できますから、世界で活躍できる人になり得るのです。

またひとつ、フィールド実験ができる環境のある「宇宙教育」の意義を確かめることができました。