ベトナムで事業を行っているMさんと懇談する時間をいただきました。ベトナムでエンジニアの育成と日本語を教えている方で、現地法人を設立しベトナムと日本の主に技術者の人材交流に努めています。
ベトナムの人口は9千万人を超えていることや、昨年度の経済成長はアジアで一番だったこと、そして平均年齢は28歳だという基礎から教えていただきました。つまり若くて成長を遂げようとしている国がベトナムです。昭和40年代の高度成長前夜の日本のような経済環境にあるような感覚です。
若い人が多いのですが経済発展前なので日本のように多様で専門職的な仕事が少なく、大学などで学んだ技術者は先進国での仕事を求めているようです。ベトナムと日本は友好関係が強く、ベトナム人は日本人に対して良い印象を持っていることも伝えてくれました。
ベトナム人が世界中の国で受け入れられているのは親切で優しいことが特長だからです。Mさんは「日本人は今でも経済大国だと思っていますが、このままだと近い将来、アジアの国々に追い越されると思います。人口増加は勿論のこと、人口に占める若い人の割合が高いこと、高度成長を遂げる要素があることから、日本人が現状で安心していたら追い抜かれてしまうと思います」という感想を話してくれました。
そしてベトナム人は優秀であり、今の日本人は勝てないと強く危機感を持って話してくれたことがあります。それは「ベトナム人は勤勉で真面目、優しくて人に親切、そしてハングリー精神を持っています。日本人が失ってしまったこれらの心を持っていることが強さです。このようにベトナム人は強さを持っていますから、日本人は勝てないと思います」という話です。
人としての強さを「勤勉で真面目、優しさと親切、そしてハングリーさ」にあると表現してくれました。なるほどと思います。現代社会における人としての強さは、人から信頼を得ることや支えてくれる友人が多いことなどですから、かつての日本人が持っていた要素をベトナム人が持っているのです。これからのベトナムは経済成長を遂げ、アジアの中の立場を強めていくと思います。
そこに加えて逞しさと感謝の気持ちを持っている話を聞かせてくれました。
Mさんの子どもがベトナムの学校で学んだそうです。宿舎は30人部屋の共同生活で、食事も何でも食べなければ勉強できない環境だったそうです。
そして子どもが養豚場の見学に行った時のことを話してくれました。見学に行った自分の目の前で豚を殺す瞬間を見たそうです。その時、逞しさが宿り、感謝の気持ちが強くなったそうです。
生きている豚を殺さなければ人は生きていけないこと。そして人のために命を捧げてくれる生き物の存在を知り、食べることに感謝するようになったことです。
命あるものが人のために命を捧げてくれることは、その大切な命をいただいていること。食べ物を粗末にしてはいけないことを感じたそうです。
豚を殺す瞬間はベトナムの子ども達も見ていますから、生きるのに必要な逞しさと、命を捧げてくれる生き物への感謝の気持ちを持っています。これは生き物の生死を日常から遠ざけてしまった日本人が無くしている感情です。
生き物の生死や人の生死でさえ、日常生活の場面から切り取られています。一般的に死の瞬間を見ることは少なくなっています。日常生活や社会見学の場でさえ、豚や鶏など生き物が食料になる瞬間を見ることはありませんし、人の死に立ち会う瞬間も少なくなっているように思います。
悲しいことですが、生き物は死を以て多くのことを教えてくれます。ベトナム人が見ている豚などの生き物が命をなくす瞬間に生じる感情を、日本人は感じることはありません。
良いか悪いかではなく、そこで逞しさや感謝の気持ちが芽生えることも事実です。これから国際社会で戦う人材は、逞しさと感謝の気持ちが必要だと思います。日本は国際社会における現在の地位を確保するために必要なものを感じるためにも、ベトナムとの交流は意味があると感じました。
作品を出展しているTさんから案内をいただき、写真展に行ってきました。Tさんが受付にいてくれたので、自ら作品の解説をしてくれました。お陰様で作品に込められた意味が理解でき、楽しく鑑賞することができました。写真は瞬間を切り取るものですが、その瞬間は連続しているものではなく、その瞬間だけ訪れる場面なのでシャッターチャンスは一瞬だそうです。自然界が作者に見せてくれる時間はほんの一瞬なので、その場面をカメラで切り取る感覚が求められるそうです。
だから写真は感動を与えるものが最高の作品だそうで、数多く展示されている作品の中でも直ぐにそこに視線がいくような作品を撮影したいと話してくれました。