安原支所で開催された第11回文化祭に行ってきました。地元の皆さんが僕の到着を待ってくれていたことや、支所に到着した連絡を受けた方が会場まで会いに来てくれるなど、皆さんとふれあえた文化祭となりました。また会場で受け付けをしてくれている皆さんが、僕のことを覚えてくれていたことも嬉しい出来事でした。
会場で展示されている作品は、この日のために作ってきたものばかりで、手芸、写真、絵画、絵手紙など楽しく鑑賞させてもらいました。
待ちに待った外交史料展「外交史料と近代日本のあゆみ」のオープニングセレモニーが開催されました。和歌山県立近代美術館で11月2日から12月15日まで開催される外交史料展は、全国に誇れる充実した内容になっています。外務省からも貴重な明治外交史料39点を貸し出してもらっていることは特筆すべきことで、関西では最大規模、全国でも最大級の史料展となっています。和歌山県でこれほどの規模の史料展が開催されることを誇りに思いますし、外務省外交史料館、和歌山県関係者、そして熱心に誘致活動を実施してくれた皆さんに心から感謝しています。
開会式は和歌山県知事、外交史料館の冨塚さん、読売新聞和歌山支局長など主催者が誇らしく並び、明日から始まる展示会への期待が膨らんできます。
冨塚さんの挨拶の中で「これだけの規模の史料展開催は関西で最大のもので、これまで持ち出したことのない史料も展示しています」、そして「和歌山県と地元の皆さんの熱意が開催につながったと思っています」という趣旨の言葉を伝えてくれました。これまでの誘致の経過を振り返り、ここまで漕ぎ着けたことを嬉しく思いながら挨拶を聞いていました。
和歌山県での開催ですから明治外交の最大の功労者である陸奥宗光伯に関わる史料も数多く展示されています。
主な展示物は「英国ヴィクトリア女王の親書」、「日墨修好通商条約調印書」、「日墨修好通商条約調印書機密特別条款」、「日墨修好通商条約批准書」、「陸奥宗光への外務大臣辞令」、「日英通商航海条約批准書」、「日清講和条約調印書」、「蹇蹇余録草稿綴」、「日露講和条約調印書(ポーツマス条約)」、「日米通商航海条約批准書」、「坂本龍馬書状 陸奥宗光宛」、「陸奥宗光獄衣」、「先考訓書」、「陸奥宗光遺書」などです。条約の名称を書くだけで心がワクワクしてきます。ここに記しただけでもとても貴重な史料であり、一つの会場で見ることができる機会は、今後は恐らくないと思います。
中でも特に気を引いた資料があります。
ひとつは、坂本龍馬の陸奥宗光宛の手紙は龍馬暗殺の8日前に書かれたものであり、ファンでなくても引き込まれていくと思います。
そして「先考訓書」は外交史料ではありませんが、人物像をうかがい知れる貴重なものです。これが外交史料館から外に持ち出されることは稀だと思います。ここに書かれていることは陸奥伯が長男に宛てた人生の心得です。以下は「先考訓書」八か条の中からの個人的解釈です。
- 時間のある時は考え事をすること。暇を弄ぶのではなく、集中して物事を考えることが大事であること。
- 名誉を得ようとしないこと。栄誉は実力で得るべきものであること。
- 失敗しても良いけれど、失敗をした時はそこから工夫をすること。
- 堪忍することが大事なことです。事を成すには堪忍することが前提で、どうしても堪忍できない時は行動にできること。
- 極力危険は避けるようにすること。危険に遭わないように行動することが大事ですが、危険を避けられない場合は一転して立ち向かうこと。
カミソリ大臣ですから、失敗を恐れず、危険を顧みずの姿勢で外交に当たっていた印象があるのですが、実際は耐えること、争わないこと、危険を避けるように行動をしていたことなど、交渉においては穏健派だったと思います。しかし攻める時は一気呵成に攻め落とすことを心掛けていたと思います。
争いは争いを生み出しますから、ここに書かれた人物像から、外交においては平和裏に交渉を進めていたように感じました。
陸奥宗光伯が足跡を残した外交史に輝く史料や個人的な資料が多数展示されています。会場に余裕があれば「もう少し展示したかった」と冨塚さんが話してくれたことから、「和歌山県の熱意が伝わっている」と感じました。熱意は伝わるものですから、冨塚さんに私達の熱意が伝わり、冨塚さんも熱意で応えてくれたことを嬉しく思います。
この規模の明治外交史料展を開催できたことは和歌山県にとっての誇りであり、後々までに語り継げる県政の功績だと考えます。
最後に。和歌山県教育委員会が県立桐蔭中学校一年生を会場まで案内してくれました。学芸員の方々がフロアレクチャーをしてくれたことで、本物が持つ真剣な空気を感じてもらえたと思いますし、交渉現場の臨場感が想像できたと思います。学生の皆さんにとって、明治外交史料の本物を見た体験は、きっと今後につながる好影響を与えてくれたものと考えています。