経済ジャーナリストの須田慎一郎さんの「大転換期を迎える日本経済」について講演を聞く機会がありました。講演の中から感想を記します。
社会で起きていることに気付ける感性が大事なことだそうです。気付いた後に疑問を持ち、そして実態から将来を知ることまでの流れが大事なことです。気付かなければそこから何も起きませんから、身近なところから変化を見抜くことが大事です。例えば、女性のスーツが売れています。このことは女性の社会進出が図れていること。しかもスーツですから従来は男性の仕事とされていた営業職の女性が増えていることを意味しています。今では女性の社会進出は分野を問わない時代になっていることに気付くべきです。
その背景にあるのは2025年頃までに女性の就業率を北欧並みにする目標があります。基準点は2016年としている指標ですが、この時の日本の女性就業率は64パーセントで、比較対象となるスウェーデンは81パーセントです。数年後までに20パーセント弱、向上させる必要がありますから、政府は待機児童の解消と幼児教育の無償化を決定したのです。子どもを育てながら共稼ぎできる環境を整えることに政府は舵を切っています。
気付きからこの背景までを知ることで社会の変化に対応できることになるのです。気付いて背景を知り、女性用スーツ市場に開拓に乗り出したメーカーは売り上げを伸ばしています。
変化への対応力こそ社会で勝つために必要なことなので、個人としても、組織としても、気付く視点を持ちたいものです。
ただそれ以前に、気付くためには現場に行くことが前提だと思います。現場に行かないで社会の変化に気付ける人は稀だと思います。現場は集約されたデータよりもっと早く変化しているからです。勿論、データは大事ですが、発表される段階のデータにより早く社会の変化に気付いて分析している人や企業があれば、その変化している市場を制することができるのです。
同様の事例として、カレーのチェーン店はハラ−ル対応のカレー店を都内で展開し始めていますし、某ソースメーカーもハラール対応のソースを開発して市場を伸ばしていることを紹介してくれました。多くの分野において国内市場は縮小していくことは明白ですから、社会の変化に気付いた企業や海外市場を目指している会社が変化に対応しているのです。
小さな変化に気付ける人、気付けない人とでは、考え方も行動も違ったものになりますから、社会への対応能力に差があるということです。生き物にとっても、環境変化に気付いてその環境に対応する能力を持ったものが進化していくことができます。社会の中で生きている存在の人間にとっても環境変化への対応は必要な能力だと思います。
夕方からは懇談会に出席しました。各企業とも共通の課題は人材の確保と技術力の確保の二点です。仕事はあるとしても人材が不足していること、同時に技術力を維持するため必要な仕事であれば、採算ギリギリであっても受注することにしているという話です。
不足している人材は技術系の人で、即戦力と言わなくても技術系の学校の卒業生は、和歌山県内で絶対数は不足してるようです。企業で育成しようと思っても技術系の人がいないので、育成しようもないことが深刻です。だから仕事があっても現有戦力に余裕がないので、欲しくても受けられないようです。
また技術力を維持するためには常に現場での実践が必要なので、維持するための仕事があれば受けていることも驚きました。収益をあげるための仕事と技術力を維持するため仕事の両方を確保する必要があること。しかも人材が不足していることから「企業の将来像が見通せない」ということです。
更に驚いたことに、上場企業であっても「新入社員は入社後10年経過すると、残っている人数は半数になっている」ということでした。以前なら、上場企業に就職したら途中で退職することは考えにくいことでした。より条件の良い企業からのオファーか能力を生かせる企業への転職など明確な理由で辞めることはありましたが「怒られたから」だとか「仕事がしんどい」という理由で辞める人は少なかったように思います。それだけ社会も人も変わっているということです。
講演会でもありましたが、社会が変化していることに気付いて対応することが求められていると感じました。
参加した皆さんとの交流機会をいただいたことに感謝しています。