事務責任者と研修会の打ち合わせをしている最中の話です。事務長の現役時代の経験談を伝えてくれました。それは「現場を大事にする」ことです。
仕事において現場を大事にすることは基本中の基本です。現場を知らずして計画はありませんし、お客さんの真の要望を知ることも、第一線で働いている人の姿も心も知ることはできないからです。机で考えること、発想はとても大事なことですが、その前提にあるのは現場で見たことや話を聞いたことであるべきです。現場に立つこと、職員さんとお客さんの意見、現場感覚は企画するうえで大事なのは、方向性を間違わないことばかりか、方向性をより強固なものにするためです。
ある時、現場から現場で補修が必要とする予算書が本部に上がってきたそうです。この方が予算担当だった若い頃、常々、社長から「現場に行きなさい。現場に行かなければ物事は見えないから」と事あるごとに言われていたので時間を見つけては現場を歩いていたそうです。
上申を受けた予算書をチェックしている時、「おかしいな」と思うことがあったそうです。それは現場になかった建物の撤去費用が計上されていたからです。予算書を上申してきた担当者に「尋ねたいことがあります。私の記憶では、確かこの現場にはこの建物はなかったと記憶していますが。もし私が現場を訪ねて以降に建設されていたものであれば私の間違いですが、確認してもらえませんか」と質問したそうです。
実は予算書を作成した担当者は現場を見ていなかったのです。請負業者の見積書を参考にして予算書を作っていたのです。現場確認したところその建物はなく、予算書の間違いであったことが分かり訂正したのです。
この方は予算書に関係なく、この仕事の担当として着任してから時間を見つけては現場を訪ねていたことが生きた事例です。現場を知らなければこの予算書に関して、積算根拠の確認を行うだけで建物の有無は確認できなかったことになります。現場が大事なのは仕事を正確にすることと、下部機関の誤魔化しを抑制するためです。「本部の〇〇さんは現場を知っている」と思わせることで「あの人は誤魔化せない」となりますから仕事の誤魔化しや手抜きの抑止力となります。
経験に基づく話ですから「現場を知ることは正しい仕事をするために必要なことです」という言葉に説得力がありました。
また仕事は書類で誤魔化そうとしても誤魔化しきれないので、それよりもそれが必要な理由を堂々と上司に伝え「書類に書くことはできませんが、こんな理由からこのことは必要です。どうすればできるのかの考えを指示願います」など上司と共に考えることが仕事です。勿論、法令順守を前提として、その仕事を進めるための良い意味での誤魔化しであることは言うまでもありません。
また現在、事務責任者として勤めている会社に、東京本社から社長が現場を訪ねて来た時の話もしてくれました。現場で働く人にとって会社の社長は、決して会うこともない雲の上にいる存在です。雲の上にいる社長が現場に来てくれて、しかも一人ひとりに直接声をかけてくれたそうです。事務長は社長に対して「職場に入る時、できるなら励ましのため一人か二人に声をかけてくれたら有り難いです」とお願いしたそうですが、社長は時間を惜しむことなく全員に声をかけて一巡してくれたのです。
従業員の方は「社長から声をかけてくれるとは思っていませんでした」、「緊張しましたが嬉しいです」などの意見が出されました。社長から声をかけてもらったことは「従業員にとって大きな励みになりますし、明日からの仕事に対してのやる気につながります」という意見があったことを聞かせてくれました。
「社長から声をかけてもらえることが励みになる」。これも幹部が現場を大切にすることだと思います。社長から声をかけてもらった従業員の皆さんは、会社に誇りを持ち、自社製品に愛着を抱くことになります。つまり従業員が自社商品の一番の購買者であり、会社と商品のファンになってくれることになります。現場主義を基本とした仕事をしたいものです。
- まちづくりを創造した和歌山市活性化について議論を行ったこと。ゼロからまちづくりを考えることで制約を外せるので、これからのまちのあり方が浮かんできます。まちは出来上がった時から後退していきますから、少し先を創造してまちの機能として織り込みたいものです。
- 治療を終えた後のリハビリテーションに関して協議を行いました。リハビリに関して、できるなら医師の指導に基づいた選択をすべきだと思います。