活動報告・レポート
2019年10月20日(日)
絵添え文教室展示会
絵添え文教室展示会

生徒の方から案内をいただいていたので、絵添え文教室主催の展示会を鑑賞しました。生徒の方は「私達の活動の成果を見に来て下さい。指導してくれている先生も素晴らしい方なんですよ」と案内があり鑑賞してきました。

案内をしてくれた方の作品は「全て、現在の心境を表現したものです」という説明がありました。暫く病院に入院していたこともあり、退院してから自宅で言葉を作品に添えたことを話してくれました。「普段通りの生活ができることは嬉しいことです。体力がなくなっているので作品づくりは大変でしたが、何とか作品展に間に合いました」と笑顔で話してくれました。

そして防野先生を紹介してくれたので、会場で話を聞かせてもらいました。和歌山県かつらぎ町に在住であることを知り、「先生のように、心から故郷かつらぎ町を愛する気持ちで舞台を演出している芸術家がいたのですね」と伝えました。

これまでかつらぎ町に関わる逸話を基にしたオペラやコンサートを舞台化していることを知りました。オペラ「横笛の詩」や「石童丸ものがたり」などですが、シナリオから演出、舞台道具制作などを全て自身で行っていることを聞きました。音楽の作曲以外は全て担当しているのは「経費削減のため」だそうですが、才能に富んでいるからだと思います。

現在、令和3年3月に新作オペラの舞台に向けて制作準備をしているところだと聞きました。ひとつの作品を創り上げる期間は3年だそうなので大変な労力を使っていることが分かります。

そして舞台は生き物なので「作品を創る時は、その作品の舞台となる現場に行って登場人物に舞台報告を行い、そこから主役の人の思いを感じてきます」と話してくれました。政策作りにも共通するものでありとても大切なことです。

故郷に残っている逸話を舞台化するために登場人物のお墓を訪ねることは必須です。お墓を訪ねることで感じるものがあり、故人と会話もできるようです。

今回の作品作りに際して主人公のお墓を訪ねた時、粗末な祠があったそうです。先生は「オペラ作品を作るに際して、もっと立派な祠を奉納させていただきます」とお墓の前で伝えたそうです。ところが車で自宅に戻る最中、突然涙が出てきて止まらなくなったそうです。理由を考えるために車で引き返してお墓に着いたのです。そこで涙が溢れた理由が分かったのです。

主人公は貧しい環境にありながら、その時、質素な祠を奉納していたのです。その祠を見た地元の豪商は「こんなみすぼらしい祠は取り除いてしまうべきだ。私が立派な祠を奉納してこれを撤去する」と言って、その隣に立派な祠を建立しました。そして粗末な祠を撤去しようとしたところ台風のような風が吹き荒れて、立派な祠は吹き飛ばされてしまったのです。ところが粗末な祠はそのままの姿で残り、心の貧しい豪商は没落していったことを回想したそうです。

先生は「私がやろうとしていたことは、この傲慢な豪商と同じことでした。今お墓に備えられている祠は粗末だと思えるものであっても、主人公のためにこれを作って奉納してくれた人がいたのです。その人の心を感じると作り替えることは心のない行為だ」と感じたのです。

舞台化するオペラの主人公と会話した結果、その心をつかむことができたのです。逸話を基にしてシナリオを描いていますが、そこに心が宿ったことになります。きっと舞台は逸話にあることを表現するのではなくて、主人公と登場人物の内心を表現できた作品になると思います。

現場に行って感じること、伝わることがあります。演出家はそれを感じ取って舞台表現する役割を担っています。故郷の逸話を舞台化するに際してお墓に参り、その心を感じ取って表現するのですから、和歌山県人として地元に伝わる逸話を知り、今後の活動に生かしたいと思います。

先生の芸術への思いを感じ取った懇談の時間となりました。かつらぎ町の文化人との時間は、芸術に携わっている人の心が伝わる楽しい時間となりました。