活動報告・レポート
2019年9月29日(日)
樺太1945年夏 氷雪の門
樺太1945年夏 氷雪の門

今年8月に北海道稚内市を訪れた時「氷雪の門」の映画に関わる展示をしていた北方記念館に立ち寄りました。第二次大戦時の南樺太の出来事を描いた映画は、完成後、映画館での上映が禁止になっている映画です。幻の映画とされていますが、和歌山市では毎年、和歌山県民文化会館でこの映画の上映会を行ってきた歴史があります。しかも上映日は毎年、8月15日と定めていたので、鑑賞した人も多かったと思います。

僕も県民文化会館での映画会を鑑賞したことがあり、この映画を観ていたことで、当時の南樺太での出来事を知っていたのです。だから北方記念館に立ち寄った時、「氷雪の門」の展示がされていたのでしっかりと見てきましたし、和歌山市内での映画会がなくなってから久しいので「もう一度この映を観たい。そして、この映画を知らない人にも鑑賞してもらいたい」と思ったことから、当時、映画会を主催していた方と相談を行い「長く映画会を実施していなかったこともあり、皆さんからの希望があるなら、今一度、上映しましょう」と快諾していただき上映会に至ったものです。

当時の主催者が快く映像を貸してくれること。オーナーが快く会場を提供してくれたことから実現したものです。関係してくれた皆さんに深く感謝しています。ただこの映画は完成した時に上映禁止になっていることから広く広報することなく、周囲で「観たい」と思っている方だけにお声掛けをいたしました。

そうしたところ、この企画を知った皆さんから「県民文化会館で観たことがあります」だとか「私も観たことがあります。今、若い人にも見て欲しい」、「観たことがないので知りませんでした。片桐さんから南樺太の出来事を教えてもらったので今回、観たいと思ってきました」などの意見をいただきました。

氷雪の門 上映会

また「この映画の県民文化会館での映画会の、最初の頃にお手伝いをしていました。何度も観ていますが、片桐さんが上映会をすると聞いたので参加しました。こんな企画をしてくれたことを嬉しく思います。当時の映画フィルムは傷んでいて、もう使えないので観ることはできないと思っていました。映画上映会を復活させてくれたことに感謝しています」という当時の関係者の方も参加してくれました。

上映会前から、たくさんの意見や感想を聞かせてもらっていたので、「企画をして良かった」と思いながら今日の日を迎えました。和歌山県民文化会館で永く継続していた映画会が途絶えて久しくなっていたところ、今回、関係者のご協力によって復活させることができたのです。

わが国の第二次大戦時の歴史を知ることで、領土問題に関心を持ち、鑑賞してくれた方々の歴史観を新たにする機会になったと思います。

知らないでいるとそのことについて話ができません。知ることで何かを感じ、話すことができるのです。歴史の捉え方は人それぞれですから、共通した歴史観を持つことはないと思いますが、歴史を肯定することになっても、否定することになっても、知ることで考えが確立されていきますから、それで良いのです。映画を観て関心を持つことで当時の歴史を調べる人もいるでしょうし、領土問題に関心を持つ人が出てくるかも知れません。無関心は課題を遠ざけてしまい、やがてその課題を忘れ去らせてしまいます。歴史は継続しているものなので、途絶えさせて空白にしてしまうことが怖いのです。特に近代史は現代に直結していますから、わが国が近代史を途切れさせてしまうと、近代史を学んでいる国の言い分に対抗できなくなってしまいます。結局、近代史を学んでいる国の話していることが国際社会で浸透していくのです。

この映画が近代史を知るきっかけになれば有難いことですし、これからでも近代史を学ぼうとする人が一人でも増えてくれる契機になれば意味のある上映会になります。

氷雪の門 上映会

会場は用意していた席が満席となり、それほど広報はしていなかったのですが多くの方にお越しいただきました。上映後の会場は静まり返り、そこに言葉はありませんでした。言葉がない状態こそ、この映画が伝えていることだと思います。

「平和は犠牲のもとに成り立ってはいけない」ということです。犠牲者を出すような平和は平和ではなく、犠牲者を出さないことが国の務めだと思います。9人の乙女が命を差し出してこの国を護ってくれた出来事を語り継ぐことは、南樺太の歴史を知った私達の現代に生きる私達の役割だと思います。

1945年8月に南樺太で起きた出来事は忘れられていますが、忘れることは繰り返すことにつながり兼ねません。次の世代に伝えること、そのためには語ることが私達にできることです。

隠された歴史を知る契機となる「氷雪の門」上映会を、和歌山市内で開催できたことを嬉しく思います。