一般社団法人防災用品研究所主催の外国人従業員を対象とした防災セミナーを開催しました。今回の対象はベトナム人の皆さんで、和歌山市内の企業で働く外国人の方向けの防災セミナーは和歌山県で初めてのことだそうです。初めてのことに挑戦することは戸惑いや不安がありますが、やってみると得るものの方が多いことに気づかされます。今回の防災セミナーも実施したことで得られたものがありました。
このセミナーは、和歌山市内の企業の協力を得たことから開催できたことに感謝いたします。この企業で働いているベトナム人の方は20人以上いるようで、外国人労働者が生産現場を支えてくれていることも感じました。
さて参加してくれた皆さんから、「ベトナムでは地震がない」という答えがありました。日本に働きに出る時は日本に関する研修会を受講してきたのですが、防災に関する研修は受けたことがなかったそうです。地震に関する基礎知識がない状態だったので、受講者にとっても企業にとっても役立つセミナーになったと感じています。
セミナーは地震が発生した時のアラートによる警報が発せられた時の避難行動、過去に発生した大災害である阪神淡路大震災と東日本大震災の時の状況を説明し、非常時には「逃げる」ことを優先して欲しいことを伝えました。
避難行動では働いている工場に入り、非常口の確認と背の高い機器やボイラーなど、地震発生時には危険な状況になる箇所の確認なども行いました。作業中に地震が発生した場合は、これらの危険個所に近寄らないこと、揺れが収まった時は上靴を履いた状態で工場から外に出ることなどを説明しました。
参加してくれた皆さんは説明をよく聞いて、アラートが発令された時には机の下に隠れる訓練も全員がしっかりと対応してくれました。二度目の警報発令の時は説明をしなかったのですが、アラートの音が聞こえると何も言わなくても机の下に身を隠してくれたほどです。
企業は大地震や津波が発生した場合に備えるために、事業継続計画を策定していますが、その中に外国人を対象にした項目は少ないと思います。しかし最近は外国人労働者が増えている中において、外国人従業員さんの安全確保を図るための対策が必要です。地震がない国から日本に来ている人はそもそも地震を知らないので対応できませんし、日本語を十分に理解できなければ的確な情報把握や避難行動もできません。
これからの企業活動はBCPに外国人労働者の避難についての項目を付け加えてもらって、安全行動と命を守るための行動規範を定める必要があると考えました。今日の外国人の皆さんを対象とした防災セミナーは、そのことを強く感じさせるのに十分な体験となりました。
また和歌山県にも外国人観光客が増えていますから、白浜町や串本町、那智勝浦町、新宮市など、南紀の観光地に外国人が観光している時の避難行動についても地方自治体やホテル事業者は考えておくべき課題だと思います。
歴史上、熊野は全ての人を受け入れてきた癒しの地であり、蘇りの地でした。外国人の皆さんの安全確保と命を守ることも、熊野を擁する和歌山県の使命です。
この外国人従業員を対象とした防災セミナー体験を基にして、和歌山県全体のBCPの見直しや外国人の方々の安全と命を守る取り組みを検討したいと考えています。
協力してくれた企業の皆さん、参加してくれたベトナム人の皆さんに深く感謝しています。今回のセミナー体験を基に、説明内容、訓練方法の質を更に高めて、これからの展開につなげていきたいと考えています。