活動報告・レポート
2019年5月24日(金)
起業について

新規事業を立ち上げる準備をしている方たちと話し合いました。若い人が新規事業を立ち上げる時の最大の関門は資金調達です。法人設立、企画、事業計画などを作成していくのですが、これまで話を伺う中で資金調達の面で苦労をする場合が多いと感じています。

これまでの経験から、新規事業の時の資金調達を金融機関に依頼した場合の決まり文句があるようです。

「実績がありませんから」。「決算書類を見てみないとね」などです。

その通りです。これから事業を始めるのだから実績がないのは当然のことです。これから立ち上げるのだから決算を踏んでいないのは当然のことです。誰でも新しいことに取り組む時は実績がなく、一期でも決算をしていないのは当たり前のことです。

そして「実績を積んでから相談に来て下さい」と言われて金融機関を後にするのです。

事業を立ち上げる時に事業資金は必要ですし、できれば当面の運転資金も融通して欲しいところですが、イニシャルコストさえ貸し出すことを渋る傾向にあります。

金融機関、特に地方都市の金融機関の大きな役割の一つに「地元企業を育成する」ことがあります。大都市のように上場企業がなく、大企業も少ない地方都市においては、新規事業の立ち上げの支援が政策の大きなポイントになっています。若い人が事業に挑むことは地域の活力となり地元で起業する、仕事をしてもらうことは、将来の地域にとって大きな強みになります。ほとんどの場合、新規事業を立ち上げるのは社会経験の少ない人達であり、資金調達も簡単にはいかない人達なのです。良い事業計画があっても、必要な資金がなければ事業化することはできません。ですから地元で起業する人を支援をすることが県や市の大きな役割であり、地元で起業しようと思っている意欲ある人を育てることが地方都市の課題なのです。

「あの県に行けば起業家を大事にしてくれる」、「事業計画や資金調達に力を貸してくれる」、「支援制度がある」などの評判が立てば、その県で起業しようと思って人は集まってくると思います。

和歌山県内では白浜町に多くのIT系企業が事務所を構えていますが、事業者向けの事務所の整備や支援制度があることも増加している要因だと思います。

県や市と同じように金融機関の役割も重要です。起業しようと考えて行動している人の相談に応じ、資金調達の支援に積極的に乗り出してくれる金融機関が存在する県や市には次々に起業家が誕生しています。県や市が例えばインキュベーションルームやブースを設置しているところは県内外から起業家が集まってきますし、空きスペースが出れば、直ぐに次の入居希望者が現れます。

ところが起業家育成に消極的な県や市には人は集まってきません。起業家同士の連携があることから「どこの県や市が熱心なのか」の情報を得ているからです。

重要な情報の一つに金融機関からの資金調達があります。「あの県の地元銀行は起業家を支援してくれる」、「事業資金を貸してくれる」などの評判が立つと人が集まってくるのです。勿論、「誰にでも貸し出すべき」と思っていません。経営者の資質を感じ取ってくれることや事業計画の内容を読み取ってくれることなど、実績の有無やまだ決算も経ていないことを求めることや、担保物件や保証人を求めることも含めて、起業しようとしている人を支援する体制を整えて欲しいと思います。

多くの起業家は成功することなく退場を余儀なくされることも理解していますが、立ち上げ時に必要な資金があれば成功していた起業家もあるはずです。経営者の資質を評価することや将来性を評価して審査を行い、資金融通してくれる金融機関の存在が地方都市に不可欠です。

起業するための準備を進めている方たちと話をして、立ち上げ時に必要な支援について考えました。これらのことは予てから提言していることですが、今もなお、大きな課題として残されていることです。引き続き起業家の方たちのお手伝いを考えていく所存です。