活動報告・レポート
2019年5月15日(水)
地方議員会議

今年も地方議員会議が開催されたので参加しました。統一地方選挙を勝ち抜いた会員である議員が全国から集まり政策研修会を行いました。

まず日本の現状を把握するために一つのデータを示してもらいました。G7の国の賃金動向です。G7の国の2000年の平均賃金を100とした場合、日本は98.7で、これらの国の中で最低賃金となっています。参考までにカナダは124.3で、フランスが119.5の実績となっています。わが国の賃金は先進国の中でも高い水準にあると思っていたのですが、実際は最低の水準であるようです。国際競争力や豊かな生活を求めるために改善すべき大きな課題です。

そして人口問題です。2004年12月に12,784万人でピークを迎えています。以降、人口減少が続き、将来予測では2030年には11,522万人、2050年には9,515万人、そして2100年には4,771万人まで減少していきます。

歴史上、1868年の明治維新の時は3,330万人ですから、その水準にまで戻ることになります。国力の維持のためには人口減少を食い止めることが最大の課題です。

参考の数字ですが、明治維新の直後、子どもが20歳まで生きる確率は50パーセントだったようです。つまり半数の子どもが成人を迎えられずに亡くなっていたようです。

そして平成に入るまで、わが国は「ゆりかごから墓場まで」の社会保障ではなく、「ゆりかごから就職まで」は自己責任の社会だったのです。平成に入り、この時期の社会保障制度が整備されていった事実があります。社会の実情に応じて制度設計を変えていくことが、政治に求められることです。

そして視点を産業界に移します。かつてIBMがパソコン部門を中国メーカーに売却した時は大きな衝撃がありました。あの世界の巨人IBMがパソコン部門を売却したこと。しかもその相手が中国のメーカーだったからです。一般的な国内の見方は「成長分野のパソコン部門を売却したのだからIBMはもう衰退していく。この分野のこれからは日本の時代だ」というものでした。

しかし現状はスマートフォンがパソコンに取って代わり、パソコンの販売は低下する一方になっています。ではIBMはどうかというとAI「ワトソン」の開発にパソコン部門を売却した費用を費やして、次世代をリードしようとしています。企業は過去にしがみつくことはできませんし、政治も同じことが言えます。

日本が知らない間に世界から遅れている現実を知ることが現状把握です。電気機器などにおいて、日本の技術力が世界一だと言われた時代は過去のものになっています。

では何故、日本は世界の競争から遅れているのに「まだ大丈夫」だと思っているのか疑問です。それは正常性バイアスに日本人は陥りやすいからだという説があります。これは「多分、これぐらいなら大丈夫」という根拠のない感覚を持っていることを言います。日本人は「多分、大丈夫」という感覚があり、世の中の見方に正常性バイアスが作用しているようです。

政治においても正常性バイアスの作用があります。

わが国の財政問題において、財政危機や財政破綻の可能性が言われていますが、これに対して「これまで大丈夫だったから、将来も大丈夫」という考え方があります。根拠が乏しくても、現状は財政危機を迎えていないので、私達は将来も「何とかなる」と思っています。

これまでも大丈夫でしたから、国と地方の借金が増え続けても、これから将来も大丈夫かも知れません。しかし「これまで大丈夫だったけれど、将来もこれまでと同じように大丈夫なのだろうか」と立ち止まって考えてみることが正常性バイアスから逃れて考えることになります。

一般的には「借金は多いより少ない方が良い」と考えるのが通常な感覚ですから、国と地方の借金も「少ない方が良い」と考えるのが通常です。だから財政危機に陥るのかどうか分からないけれど、どちらの可能性もあることを前提にこの問題を考えるべきだということです。財政担当が「大丈夫」と言っていることが正常性バイアスに支配された考えなのか、根拠のある「大丈夫」なのかを考えてみることが社会の出来事の見方の一つです。

産業界におけるモノの見方の一つの事例を考えましたが、考え方に広がり感がでてきます。他にも事例を用いたモノの見方を考えることができ、良い政策研修会になりました。