和歌山県議会から近畿6府県議員交流フォーラムに参加しました。第15回目を迎えるこのフォーラムは近畿6府県の県議会議員が集まって、地方自治、観光文化、防災、そして医療福祉をテーマに議論する会議です。僕は今回が2回目の参加となり、防災分科会に出席することにしました。今回防災分科会を選択したのは、台風第21号被害への対応の在り方と現在復興中の取り組みに関して分科会の室ア先生や府県会議員の方々と意見交換を行いたかったためです。結論として、参加議員はとても熱心で、先生の話もとても役立つ議論となりました。
室ア先生は、兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科、科長であり、国の中央防災会議専門委員を務めている先生です。
冒頭、室ア先生からは、災害の時代を迎えているので、大型台風は毎年続くと思うべきであり、南海トラフ巨大地震も近寄っていると考えて、災害と向かい合うべき時代であることを示してくれました。
特に自然の狂暴化と太平洋の気温上昇による大型台風到来の可能性が高まっていることを前提にした防災計画を策定する必要性を示してくれました。
ただ日本社会の課題として、社会の脆弱化と家族、地域の支え合いが弱まっていることがあり、地域コミュニティの弱体化が自然災害への対応力を弱めているという指摘がありました。社会の脆弱化は、少子高齢化のため助け合えるために動ける人が少なくなっていることや自力で災害に対応できない人が増えていることが原因です。また家族や地域の支え合いが弱体化していることに関しては、一人暮らしの世帯が30パーセントを占め、最大派になっていることが原因です。
そこでカギを握るのは、減災文化、地域力、災害への備えの三点です。防災は力づくによって災害を抑え込む思想ですが、減災は自然相手だから被害を極力少なくすることを目指した対策を講じる思想です。人が力づくによって自然災害に向かおうとしても無理な話なので、被害を最小限にするための対策を講じることを目指すのが減災対策です。
また地域力は地方創生の取り組みをする中で地域のコミュニティを図り、災害発生時の信頼関係に基づいた協力関係を整えることにあります。そして災害への備えは自助と共助、そして公助のバランスを取ることが大切だと言うことです。
現在、概ね自助が9、共助が2、公助が1の比率になっていますが、公助の役割がこれだけ低くても良いかという議論が出てきています。高齢社会における公助の役割は大きく、命を護る、助けるために今よりももっと地域に入っていくことも議論すべき課題であると提言がありました。例えば高知県黒潮町では町職員が、地元や担当地域に入る制度を採用しているので、地域の皆さんとの信頼関係を築き、防災対策に取り組んでいる事例があります。先進地である黒潮町のような取り組みは難しいと思いますが、地域力こそ防災につながるものですから、公助のあり方も議論すべきことだと認識をしました。
僕の意見は次の通りです。
1.近畿のそれぞれの地域の多くが高齢社会を迎えている中、防災対策は高齢者の方に向けたものが必要です。高齢者の中には「もう逃げても無駄だから逃げない」という人もいますし、老々介護の家庭は避難したくてもできない状態です。高齢社会における避難対策はこれまでの地域防災計画の見直しが必要な項目だと思います。
高齢者の人は寝室に防災用品セットを備えている人もあり、避難所の場所を知っている人もいます。しかし、いざ避難という場合に行動できるかどうか不透明な状況です。日常的に命を護るための備えをしていても、避難行動を取れないことも十分考えられるので、高齢者の皆さんの命を守ることを計画の中で議論し直す必要性があります。
地域が高齢化している観点から地域防災計画のあり方を考えるきっかけにしたいと思います。
2.台風第21号が和歌山県に到来し、和歌山市の県工業団地が高波による浸水被害を受けました。県としては県工業団地内の企業を守るための事業継続計画は策定されていませんが、ここに立地している企業が事業継続できるための安全性確保が必要だと考えます。民法上、過失がなければ県の責任は問われませんが、法律上の責任はないとしても心ある対応をしなければ企業は安心して事業活動を継続することはできません。特にメーカーから仕事を請け負っている中小企業からメーカーへの県工業団地の安全確保に関する説明責任を果たすことはできないので、県の役割は重要だと考えています。
県の果たすべき責任の範囲について議論が必要だと思います。
3.高齢者が災害発生時に避難するため、一般社団法人和歌山防災用品研究所では防災バスを準備しています。防災訓練でも出動させていますが、被災地での高齢者の避難場所としても有効ですし、津波の場合は防災バスに乗車してもらって移動することも可能なので、少子高齢社会における防災対策として大きな役割を果たせる対策であると考えています。
ただ道路事情を県や県警察が把握して防災バスが走れる環境を整えることや、どんな時も車で避難しないことを避難者の取るべき姿勢として決めてしまうと、この防災バスは効果を発揮することはできません。機転を利かせた行政の対応が必要だと考えています。
室ア先生から見解を示してもらい、また議論の対象としてもらいました。参加して有意義な分科会となりました。分科会に参加した皆さんに感謝しています。