地域の活性化を図るためには種も仕掛けもあります。種も仕掛けもないところに突如として結果が現れることはありません。誰かがどこかで、何かの仕掛けをしているから結果が現れています。過去の和歌山県の大型のプロジェクトに関しての仕掛けの一端を聞かせてもらう機会がありました。
世界遺産に登録されている熊野古道は当時の西口和歌山県知事が動いたことにより実現したものですが、そのきっかけは県内の青年から届いた一枚のファックスがきっかけになったそうです。西口勇元知事の心を動かせ「熊野古道を世界遺産にしよう」と思わせたことも凄いと思いますが、青年の意見を聞いて行動した知事も凄いと思います。そのことが県議会で取り上げられることになり、また田辺市などを舞台とした広域型のジャパンエキスポ南紀熊野体験博の開催へと展開していくことになります。
南紀熊野体験博を開催することで熊野古道の知名度は全国的には高まり、熊野古道とスペインガリシア州との姉妹道提携なども実現させていくことになります。
博覧会実行委員会に参加した当初、僕は熊野古道の存在を知りませんでした。熊野古道のどこに人を呼び込む力があるのか。世界遺産に登録されるだけの価値があるのか、博覧会として成功するのか。などの疑問を持ちながら委員会に所属したことを思い出しました。
全国に広報活動をしていく中で知名度と関心が高まっていったことも思い出しました。
ユニバーサルスタジオジャパンの大阪での立地にも和歌山県が関係していることを知りました。当時、和歌山市のコスモパーク加太に誘致しようと青年たちが活動していたことを聞きました。実現不可能と思われる行動でしたが、構想をまとめ渡米し、プレゼンまでしてきたそうです。
その結果、和歌山マリーナシティとコスモパーク加太に視察団が来てくれて、その中には映画監督のR監督が和歌山市を訪れていたことを知りました。結果として和歌山市内への誘致は実現しませんでしたが、大阪に誘致できたことで関西の活性化につながっています。
もし和歌山県の青年たちが行動していなければ、同スタジオは川崎市に立地していたかも知れません。これは松下幸之助さんの故郷和歌山市として誘致活動をしたことで相手の心を動かしたようです。
和歌山県を舞台にした映画「ランニングフォーエバー」を誘致したのも青年たちの働きによります。森田健作さんが監督と主演した映画撮影で和歌山県内をまわり、映画化を実現しました。当時、紀三井寺競技場に取材に行っていた僕は、映画の主人公のマラソンランナーがゴールする地点のエキストラとして出演することになりました。丁度、ゴール地点で取材していたところ、ゴールシーンの出演者がいないことに気づいたスタッフが「ゴールシーンのお手伝いをして下さい」と声を掛けてきたことから出演することになりました。
アドバイスは「主人公が必死でゴールしようとするので、優しく励ますような眼差しで主人公の姿を見てください」というものだったと記憶しています。
今もこの映画のDVDは存在しているので、地域活性化の結果として足跡を残しています。
以上の例のように、後で語れるものを残すことが大事だと思います。物語とした語れること、語れる人がいること。それが結果に命を与えてくれるのです。語るためには「やること」が語るために大事なことで、「やらなければ」何も結果は残せないのは勿論のこと、語れる物語もありません。
そして「やれる、やれない」で大事なことは、「あの人が関わってくれるならやれる」と思ってもらうことです。ある人が参画してくれることで「実現できるかも知れない」と思ってもらえることが「やる」ためにとても大事なことなのです。庁内で有意義な議論を交わせました。