和歌山市雑賀崎の県工業団地を訪ねました。「一度、会社を見に来て欲しい」と依頼をいただいていたこともあり、現場を視察することと意見を聞かせてもらうことを目的に視察しました。
台風21号以降、何度、この場所を訪れても被災現場の姿に驚くばかりです。立地している企業は復旧を目指し、昼夜を問わず散乱した物品の片付けや工作機器の点検と改修など作業を続けています。復旧した機器から使い始めているので、製造ラインが復旧している部門もあり、不満を述べるのではなく稼働を目指している姿に感銘を受けました。
被災した各企業は早期復旧に努めていますが、短期的復旧と共に中期的課題も見えました。それはこの工業団地に立地している企業はメーカーの仕事を受けている中小企業だということです。
メーカーから受注した部材などの供給が難しくなったことから、早期の部材の調達をめざしメーカーへの納期の変更も依頼しています。メーカーは雑賀崎工業団地が台風21号被害を受けていることを知っているため、納期変更に応じるか、または緊急避難的に他の部品会社に供給先を変更している場合もあります。
今回の事象をメーカーは理解してくれているので、工場が再稼働すればメーカーからの受注を受けられるようなのですが、将来の課題も見え始めました。
それは「今後、今回と同規模の台風が到来した場合、被害に遭わないための対策を取っているかどうか」の問いです。つまり台風21号と同規模の台風に見舞われた場合、工場が被災することなく台風通過後も継続して稼働できることが求められることになるのです。
自然災害への対応として「事業活動継続計画」、つまりBCP計画を策定しておくことが求められることになります。今後、今回のような災害が発生した場合、再び同じ原因で工場が稼働できなくなる事態を避けることが求められるのです。
これらの企業の工場が復旧し再稼働した暁には、メーカーに「自然災害で工場が稼働できない事態にならないことの説明」を求められることになります。
各企業でできることは実施しますが、例えば堤防の改修や嵩上げなどの高波対策を計画しているかどうか、メーカーとして継続するための取引条件となることも考えられます。
ですからこれらの企業はメーカーに対して「自社で対策を実施していること」に加えて「和歌山県が堤防の嵩上げ高波対策」などを実施し企業が安心してこの場所で事業継続できるかどうかを答えることになります。
各企業が復旧を終え、再稼働を果たした後の面談の時、メーカーから和歌山県が実施している防災対策の健全性を評価されることになるのです。もし台風21号と同規模の台風が到来した場合、立地している企業の安全確保を図れることが、取引継続のための条件になりそうです。
和歌山県の工業団地ですから、和歌山県の支援が受けられていることが取引を継続する条件になります。和歌山県が被災した企業の復旧のために実施する支援制度をメーカーは注目しています。
メーカーからすると「台風の度に『大丈夫か』と思うような場所に立地している企業との取引は考え直す」と思いますし、中小企業からすれば「ここで事業を継続していくのが良いのかと感じることがあります」となります。
とにかく大型台風発生時でも、安心して事業が継続できる会社環境を整えることを求めているのです。この場所で工場を再稼働することに不安を持っているなら、今後、雑賀崎で事業を継続するために必要な設備投資などを実施しなくなります。
和歌山県の被災企業への支援制度と、和歌山県として民間事業者が当該事業を継続、強化することを求めたいと考えています。