会社経営者と懇談しました。その中で考えさせられる話を聞かせてくれました。
「誰でも会社設立当初は人脈や資金が不足していることから親しい人を頼ってきます。私のところにも起業した人が支援の依頼に来ることが度々あります。相談の中には『起業資金の融資を受けるので銀行に対しての連帯保証人になって欲しい』だとか、『資金提供をして欲しい』、『仕事を紹介して欲しい』などの依頼です。
これから起業する若い人を応援したい気持ちがあるので、友人や知り合いからの紹介であれば極力相談に応じるようにしています。
ところが起業支援をした後に問題が多すぎるので、最近は余程のことがない限り応援をしないようにしています。それは依頼者の起業した後が悪過ぎるからです。
それはこんなことです。『資金不足で貸して欲しい。会社を立ち上げたら借りたお金をお返ししますから』と依頼があり数百万円を用意して貸した数事例があります。その全員がお金を返しに来ていません。そのため電話をしても最初の頃は電話に出るのですが、『待って下さい』と答えるばかりで返す意思はありません。やがて電話に出なくなってしまうのです」ということです。
また「銀行の連帯保証人になってあげた人からはお礼の言葉もありませんし、返済が滞っていることから銀行から話が来ています」という事例もあります。
そして「仕事を紹介して欲しいということで知り合いの社長に依頼して仕事を任せたことがあります。その仕事を終えた後もお礼の挨拶はなく、知り合いの社長から『あの会社に仕事を回して終えているから』と電話をもらって仕事を貰ったことを知ることがあります。せめて電話ぐらいはして欲しいと思います」という話です。
まだまだ酷い事例を聞かせてもらいましたが、こんなことが続くため「もう起業するための支援をしないことにしています」ということになっています。
これまでに起業した人が不義理をしたために、若い起業家を支援してくれていた人がいなくなったのです。これは地域にとって大きな損失だと思います。これから起業を考えている若い人達が、人脈も経験も資金の相談も、この経験豊かな社長から受けられなくなったのですから。先に乗り出した人は後に続く人のためにきちんとした仕事や対応をしておくべきです。
最後に「良い起業家はたくさんいると思いますが、中には不出来な起業家もいるのは事実です。だから私は嫌な思いをしたくないので関わらないようにしています」という話でした。良いことも悪いことも連鎖していきますから、後のことを考えて人とは良いつきあいをしたいものです。
連合和歌山・和歌山・海南海草地域協議会主催の「政策学習会」に参加しました。学習のテーマは「和歌山の公共交通の現状と今後の展望」で、JR和歌山支社伊藤支社長から話を聞かせてもらいました。とても参考になる話ばかりで、和歌山県や和歌山市の公共交通の課題を知ることができました。
和歌山市の平日の公共交通分担率は、鉄道が5.3パーセント、バスが1.7パーセントで、合計が7.0パーセントの数字です。これは全国平均を大きく下回っていて、和歌山市民が公共交通をあまり利用していないことを示しています。車社会の典型的な市が和歌山市だと言えそうです。またJR西日本には52路線がありますが、乗車減少率が高いのは5番目が紀勢本線、11番目が和歌山線になっています。和歌山県のこれらの路線の鉄道利用率が大きく減少傾向にあり、JRに存続させてもらっている状況です。
参考までに鉄道には平均通過人員という数値指標があります。平均通過人員が一日4千人を下回ると、鉄道の廃線またはバスに代替する路線であると判断されることが国鉄から民営化した時の指標です。
阪和線と紀勢線平均通過人員を見てみます。
- 天王寺と日根野間。157,400人/日。基準値として100パーセントとします。
- 日根野と和歌山間。37,000人/日。23パーセント。
- 和歌山市と白浜間。8,700人/日。6パーセント。
- 白浜と新宮間。1,300人/日。1パーセント。
- 和歌山と五条間。4,800人/日。3パーセント。
以上のような数字となっています。つまり白浜から向こう側の路線を維持することは簡単ではないという現実があります。そのため和歌山支社として、和歌山県の公共交通の利用率を高めるための取り組みをしているところです。
高野山と熊野三山の「縦のルート」の強化を図っています。2013年から「高野山・熊野」聖地巡礼バスを運行させ、2017年度実績は3,212人の利用があります。これは対前年度比140パーセント増となっています。
また紀伊田辺と熊野三山の「横の観光ルート」を構築し、インバウンド対策を実施しています。
そして梅田に新駅が誕生することが決定していて、この新駅は地下が改札口となり大阪駅に直結することになります。「特急くろしお」は新駅に停車することになりますから、和歌山市と大阪駅の移動の利便性が改善されることになります。また「なにわ筋線」の開通も決定していることから、「特急しろしお」の移動時間短縮が期待できることになりますし、大阪の中心部から和歌山市へのお客さん増加が期待できることになります。
そしてJRは和歌山県の「関係人口」を増加させるための取り組みを実施してくれています。「関係人口」とは交流人口と観光人口を増加させることを目指し、和歌山県を何度も訪れてもらえることを期待しての取り組みです。一度和歌山県を訪れて終わりではなく、和歌山県ファンになってもらって何度も訪れてもらえるようにすることが「関係人口」なのです。公共交通の利便性向上と共に「おもてなし」は毎回変えることができるサービスなので、訪れるたびに新鮮な和歌山県を目指しています。
「関係人口」の強化を図ることが和歌山県に必要なことだと感じました。
この学習会では和歌山県の公共交通運行の厳しさが理解でき、それを打破するための取り組みも知ることができました。鉄道会社だけではなく行政も公共交通のあり方をもっと考えて協働していくことが必要だと考えました。