活動報告・レポート
2018年4月3日(火)
現場を知る
瑞浪超深地層研究所

岐阜県にある瑞浪超深地層研究所を訪れました。ここでは地下300メートルから500メートルの箇所に研究用の坑道を作り、地層、岩石、地下水、微生物など地下の環境調査を行っています。

何事もそうですが、実際に現場を見なければ把握できないので、地下を掘削しその場所で地下の環境調査を進めているのです。

ここでは地下水の流れや岩石の形成されている過程などが分かり、地上と環境の異なる地下の世界の一端を垣間見ることができます。

さてわが国では地上の建造物はたくさんありますが、地下深くまで掘削した施設は少ないようです。本日、入った地下300メートルは地上高でいうと東京タワーより少し低いぐらいのものですから、相当地下深く入ったことになります。未知の世界は人の好奇心を引き起こしてくれます。地層で形成された花崗岩は地下にあるものとして見るとき興味深く思えますし、地下水もどんな味がするのだろうと関心を持ってしまいます。そんなことを思うのは現場を見るからです。五感は現場の空気を感じることで機能しますから、現場感覚はとても大事にしています。

瑞浪超深地層研究所

さてご一緒した人の中には掘削や水道の専門家の方もいました。現場を見る視点が違うことはとても勉強になるものです。

掘削の専門家からは、立坑は上部から掘削していきますが、コンクリートの流し込み方、固め方に関心があると話してくれました。通常、コンクリートは土台作りのため下部から固めていきます。それを逆に上部から固めていく工法は珍しく、日本の技術力を感じたと話してくれました。

また水道の専門家は、地下水の流れが気になったと話してくれました。雨水の浸透速度の遅さと裂け目から湧き出る様子に興味があるようでした。地下300メートルの地点の地下水は、約一万年前の雨水が浸み込んだもので、一年に数ミリ単位で浸透していくような地層に関心があると聞かせてくれました。

瑞浪超深地層研究所

そして地下水は不純物のない純水ですが、これは雨水が岩盤を通過する過程で不純物が取り除かれていくからです。水道も浄化場でろ過していますが、1万年かかるろ過のしくみを短時間でできるようにすれば、限りなく純水を作り出すことができることになります。自然界のしくみを人が真似ることは難しいことですが、自然界のしくみは最高の研究材料になると思います。違う見方を知ることは、物事にそんな見方があるのかという気付きになります。

現場を見て、現場を見た人同士で意見交換をすることは、これまでにない新しい視点を身につけるきっかけになるものです。

瑞浪超深地層研究所を見学した人からは、「ここは誰でも見学できる場所ではないので、ここに来られただけでも凄いことだと思います。これまで知らなかった研究を見ることができて関心が出てきました」という意見や「我が国の科学の力を感じました。科学が日本の強みなので、賛同することや予算措置をすることで、今以上に技術力を高めていく必要があると思いました」などの意見を聞かせてもらいました。

専門知識がない分野は、見学だけで深い技術内容まで知ることはできませんが、現場の感覚を味わえることに大きな意味があると思います。現場を見ることで人に話をすることができるからです。このように人に語るためには現場を見る、知る必要があります。

核融合施設の研究施設

続いて核融合施設の研究施設を訪れました。核融合は今よりももっと未来のエネルギーと位置付けられているもので、今の研究が実用化に直結するものではありません。早くても50年以上先に実験の成果があれば良いというレベルですが、今すぐ利益を生み出さない、成果が表れない研究をしていることが凄いと思います。

直ちに成果が出ないものは「やる必要がない」と実務優先の考えで言われる傾向がありますが、今だけを見ているようでは未来の種子を蒔くことができません。今成果が出なくても、未来への投資は絶対に必要です。核融合は将来の可能性を閉ざさないために必要なものだと思いました。