今日から三日間、行政改革・基本計画等に関する特別委員会の視察に出掛けます。初日は東京の日立製作所中央研究所です。視察目的は「がんの早期発見の取り組みについて」を調査することです。
この研究開発グループでは「線虫」を使ったがんの早期診断の研究を行っています。生物を使ったがんの早期発見の研究をしている研究所は少ないと思います。「線虫」とは長さ一ミリほどの微生物です。人間にとって有益な生物ではなく、もし体内に入ればお腹が痛くなるなどの疾病となることもあります。
ところがこの疾病が研究対象になるのですから、世の中は不思議なものです。九州大学医学部の教授が、お腹の痛みのある患者さんを診察したところ、「線虫」が内臓にいることを見つけたのです。そして「線虫」の近くにがん細胞を発見したのです。このような「線虫」が生息しているところにがん細胞がある事例が次々に見つかり、「もしかしたら『線虫』はがん細胞の臭いに反応するのではないだろうか」と考えたのです。
そのことを調査するために「線虫」の研究を開始したのです。「線虫」を培養し、がん患者の尿を容器に入れたところに「線虫」約50匹を垂らします。そうすると「線虫」はその尿に近寄っていくことが分かりました。健康な人の尿を入れた容器に「線虫」を入れても反応しないことから、「線虫」はがん細胞の臭いに反応するのではないかと推定し、その実証を続けています。
がんの早期発見の検査方法で100パーセント的中する方法はなく、この「線虫」を使った検査方法を試すと、約80パーセントでがん細胞であるかどうか分かるそうです。
確率的には高いものがあり、がんの早期発見につながる可能性を秘めています。ただ微生物を使った検査方法はどちらかと言うとアウトローで、「線虫」ががん細胞の臭いに反応する科学的な根拠は分かっていないのです。分からないけれど、がん細胞に反応する。その事実があるのです。
世の中には根拠が分からないけれど、何故かそうなる事象が存在しています。科学的根拠がないから効果がないとは言い切れないことがあります。「線虫」ががん細胞の臭いに反応することも、決して「そんなはずはない」とはならないと思います。むしろこの機能を活用し、初期段階のがんを発見するための最初の検査として活用すればよいと思います。
ところで「線虫」の寿命は約3週間という短さです。短い生涯の中で、人に役立つ役割を果たしてくれると思うと愛おしくなってきます。そして「線虫」は雌雄一体という不思議な性質を持っているのです。不思議な生物である「線虫」が、がん早期発見の役割を担ってくれる日が訪れるかもしれません。
科学的検査とは違う微生物を活用したがんの早期発見の検査装置モデルを拝見して、人を幸せにするための研究をしている人は、生き生きしていると感じました。確実な成果が見られないとしても、目指すべきものがあれば困難に立ち向かっていけると感じました。
ところで日立製作所の中央研究所には、過去の貴重な製品が展示されています。コンピューター、電卓、DNA検査装置など、日本発の技術と製品が展示されているのです。日本の科学の進歩を感じさせてくれる展示を見せてもらいました。このような研究による過去からの進歩の成果を現代の私達が受け取っているのです。
そして現代もまだ世にないものの研究が続けられています。いつの日か、今日、取り組んでいる研究が実用化され、将来の私達の快適で健康的な生活に欠かせないものになっていると思います。