和歌山県内視察の最終日はすさみ町です。すさみ町と言えばイノブータン王国で、イノブタが飼育されているところです。イノブタはイノシシとブタを交配させた動物で、すさみ町で食べることができます。
視察に訪れたのはイノブタを飼育しているイブファームです。すさみ町の特産品になるように平成25年に養豚農場を譲り受けてイノブタを飼育しています。現在のイノブタのお肉は、柔らかくて臭みもないので美味しくいただけます。出始めた当初は固くてイノシシのような匂いもしたことがありますが、品質改良によってそれらを改善しています。その次世代イノブタがここで生産されている「イブ美豚」なのです。
農場を視察して印象に残ったことがあります。イノブタの生産性を向上させていること。品種改良を行っていること。そしてイノブタの子どもがとても可愛いことです。
イノブタは父親がイノシシで母親がブタだそうです。生まれてくる子どもがイノブタということになり、遺伝子的にはイノシシが1/4でブタが3/4となっています。成長すると餌に炭水化物を与えることで肉の質を良くして、同時に臭みを消しているそうです。
イノブタは生まれてから約10か月で大人に成長します。早いと思ったのですが、豚は半年で大人になるので生産性と利益率で言うと養豚の方が効率的になるようです。しかしすさみ町の特産品を送り出したいと思う熱意から、イノブタの生産と品質改善に取り組んでいます。
生産体制も確立されています。生まれたイノブタの子ども達は母ブタと一緒の場所にいて、少し成長すると母ブタと離して飼育しています。一頭の母ブタは一度に約10頭のイノブタの子どもを産みますが、豚と違って約10パーセントの子どもが大人に成長できないで死んでいくようです。生まれたイノブタの子どもを見ていると、大きなイノブタと小さなイノブタがいることに気付きます。体の小さなイノブタは体の大きなイノブタの子どもに母ブタのミルクを独占されるので十分なミルクを飲むことができません。同じ時期に生まれたイノブタでも成長に大きな差が出ているのです。小さなイノブタの子どもには餌を与えるなどして成長させるようにしていますが、どうしても成長が遅くなるようです。
豚舎は生まれた月によって場所を変えて行っています。豚舎を移動していくと成長度合いが違うので、生産性を高めるためのローテーションの方法が良く分かります。
ただ生産性を高めようとしているものの現在はまだ十分な利益を生み出していないので、将来目標として年間1,500頭を出荷頭数目標にして事業性を高めていくことにしています。そのための整備投資が経営上の課題となっています。
他にも課題があります。イノブタは和歌山県の方なら知っていると思いますが、全国的には知られていないことです。関西でもイノブタの存在が知られていないこともあり、商品の多くは和歌山県内、特にすさみ町となっています。これから市場を拡大していく必要があり、首都圏での市場開拓のため和歌山県と共に商談会や展示会に出展しているところです。認知度を高めることが商品力を高めることになり、流通ルートも拡大していきます。まだまだこれから市場開拓が必要な新しい産品なので、和歌山県としての支援が必要だと考えています。
すさみ町で飼育している次世代のイノブタは美味しいので、更に生産拡大と市場拡大が必要だと感じました。生産者はこの両方に尽力しているので行政の継続した支援も必要だと感じました。
その後、南紀支援学校とはまゆう支援学校の二校を視察しました。この両校は統合する計画があるので、現状を知り、問題を解決しての統合を図りたいと思っています。