黒部ダムと黒部川第四発電所の視察を行いました。黒部ダムと発電所を訪れるのは僕がまだ20歳代の時以来ですから、あれから約30年が経過していることになります。当時と違った感動を味わうことが出来ました。
通称「くろよん」は、昭和31年に建設を開始し、昭和38年6月に完成したもので、当時のお金で513億円、延べ1,000万人の人が工事に関わり完成させた世紀の大工事です。
「黒部の太陽」で観た工事現場を通行すると「ここにはこんな凄い歴史と人間ドラマがあったんだなぁ」と感じました。日本経済発展のために必要だった「くろよん」工事に多くの人が関わり完成させたドラマは現地を訪れる人を感動させる力を持っています。無理と言われた事業を決断した人、破砕帯を突破することに命を懸けた人、この工事を支えた人達。黒部川第四発電所には歌手の中島みゆきさんが紅白歌合戦に出演した時の写真や記念品が展示されていますが、その時の歌が「地上の星」です。
視察のケーブルカ―の中でこの歌を聴いたところ、中島みゆきさんが「地上の星」を歌うのに「くろよん」の現場を選んだ理由が分かるような気がしました。ここには歴史に名を残した「くろよん」がありますが、この工事に関わった人は一人も名前が出てこないからです。名前を残していない地上の星たちが不可能と言われた「くろよん」の建設に関わり完成させているのですが、名前を残している人はいないのです。しかし彼らは歴史に名前を残すことを目指したのではなくて、これから発展する日本のために、この工事をしなければならない使命感がありました。
彼らは名前を残していないけれど、日本の成長につながった工事に関わった誇りを抱えて生涯を過ごしたと思います。誇りを抱えて生きられることは幸せだと思いますし、「黒部の太陽」であったように、工事完成後に工事現場に立った人もいたと思います。きっと「多くの仲間の命を失ったけれど、俺達がやり遂げた仕事はこれからを生きる日本人のためになるもので、誇りだ」と思ったことでしょう。
社会に役立つ仕事をするのは自信と誇りがあるからできるものです。「くろよん」を訪れた人が感動するのは、誇りを持った日本人が成し遂げた仕事を思うからだと思います。
二度目の「くろよん」ですが、年齢を重ねた分だけ現場に立つと、このように思うことがありました。
そして今回の視察を更に効果のあるものにしてくれたのが案内してくれた皆さんがいたからです。宿泊したくろよんロイヤルホテルに迎えに来てくれた職員さんは、最後の宇奈月まで私達を案内してくれました。挨拶を交わした時、「黒部は初めてですか」と質問があったので、「二度目です。前回は30年ぐらい前に来ました」と答えると「それなら大丈夫です」と答えてくれました。話し方と人柄にユーモアがあり、「今日は楽しい行程になりそう」と思いましたが、最初の印象の通りになりました。
凄いのは「くろよん」の歴史と現在についてと訪れたその場所毎のエピソードを説明してくれたことと、私達への気配りがあったことです。今回案内してくれた職員さん達も「地上の星」の一人です。例えばこの職員さんが退職した後に、会社が忘れても私達は楽しい記憶と共に覚えています。それは私達のライオンズクラブ会長が「今回のような素晴らしい視察はもう二度と行けないものだと思います。生涯で次に行けないかもしれない視察ができたことに感謝しています」という言葉に表現されています。
時間に感動を味付けして心に深く刻むことで、生涯忘れない記憶になります。今回の「くろよん」の視察はそんな生涯に一度の体験でした。こんな素晴らしい仲間と生涯心に残る体験ができたことを幸せに感じています。参加した皆さんが同じように思ってくれているなら、より幸せなことです。こんな素晴らしい日をプレゼントしてくれた和歌山ゴールドライオンズクラブの皆さんに感謝しています。今回の視察は和歌山ゴールドライオンズクラブ結成14周年記念行事として実施したことを付け加えておきます。