飲食関係者の皆さんと懇談する機会がありました。経営者の方々の話は身になるモノばかりです。
「お店を開店させた時にお世話になった人達のことは決して忘れていない。お世話になった人達に恩返しをすることを念頭に置いています。その時の気持ちは今も持ち続けています」という話をしてくれました。
この経営者の方がお店を出した時は、まだ若くて商売で成功するかどうか分からない時期でした。銀行に融資の相談に行き、何とか融資してもらったので念願のお店を出すことができました。お店が出来た時、銀行で融資を決めてくれた行員の方が来店してくれました。それ以降、何度も来てくれるなど贔屓にしてくれました。今は定年退職していますが、その人へのご恩の気持ちは今も持ち続けているということです。
それは融資を決めてくれたことに加えて、次のような話があるからです。
融資してくれた銀行の人やその銀行の取引先の人達が、よくお店に来てくれていたことを後に気付いたそうです。お店に来てくれた理由は、その銀行員の方が銀行の同僚や後輩、取引先の人にお願いをしてくれていたことにあります。職場の行員には「親睦会、送別会や歓迎会があれば使って欲しい」と声を掛けていたこと。取引先には「今度出来たお店は若い経営者が頑張っています。懇親会があれば行ってあげて下さい」、「おいしいお店がありますから、一度一緒に行って下さい」と声を掛けて、お店に行ってもらえるように気配りをしていたのです。
この経営者は直接、担当の銀行員からこの話は聞いたことがありませんでしたが、後になって、「あの人がみんなを誘っていたよ」、「熱心にお店のPRをしていたよ」と聞いたのです。その話を聞いた時は、転勤して居なかったのですが、その時の感謝の気持ちは今も忘れていないと話してくれました。
そして「いつか恩返しをしなければならない」と思い、懸命にお店を切り盛りしてきたのです。今も感謝の気持ちを持ち、年に数回は食事にお誘いしているそうです。
「恩返しは具体的な形にすることは難しいのですが、年に一回、二回、会って食事をする、お茶を飲む、それだけでも感謝の気持ちを伝えることができます。お世話になった人に会うことが一番の恩返しです」と話してくれました。
そして「恩とは見えないものです。花に例えると根に該当すると思います。大きな花を咲かせることができるのは根が張っているからです。根が腐っていれば花は咲かずに枯れてしまいます。恩は花の根の部分に似ているのです。ですから恩返しとは花、根に水をあげること、時には養分をあげることだと思います。水や養分に当たるものが会うことであり、一緒に食事をすることです。もし水をあげなければ花は枯れてしまいます。恩を受けた人には恩返しをしなければ、花は枯れてしまうことを覚えておいて下さい。得てして、人は大きな花を咲かせると、それは自分で咲かせたと思ってしまっています。大きな花を咲かせるためには根を張る必要があり、根を枯らしてはいけないのです。恩返しをしていれば、花はいつまでも咲き続けます」と話してくれました。
恩返しは、お世話になった人が誇れるような立派な人になること。そしていつまでもその恩を忘れないことです。恩人が期待していた以上に立派になることを目指すこと。そして年に数回でも会って話をすることが恩返しだということです。
お世話になった人への恩返しを忘れないようにしたいものです。
今年で設立70周年を迎えた松竹新喜劇の和歌山市公演が開催されました。主催は紀州文化交流会で松竹新喜劇の渋谷天外さんが理事長を務めています。今回は「観劇の依頼」をいただき、和歌山市での公演なので観劇させてもらいました。和歌山市公演は久しぶりのことだと聞きました。前回の和歌山市公演は藤山寛美さんが現役で出演したそうですから、凄い人気だったようです。今日聞いて驚いたのですが、藤山寛美さんは59歳でお亡くなりになっているとのことで、余りにも早くこの世から去っていたことを知りました。
藤山寛美さんは喜劇界の大御所だったので、もっとお年だと思っていました。59歳でお亡くなりになるまでに圧倒的な地位を築いていたのですから、松竹新喜劇和歌山市公演を観て藤山寛美さんの凄さを感じました。
そしてこの舞台にはお孫さんの藤山扇治郎さんが出演していました。舞台後の紹介で藤山寛美さんのお孫さんであることを知りましたが、公演中、「この役者は誰だろう」と思うほどの存在感がありました。主役は渋谷天外さん。そこに藤山扇治郎さんも登場した「新・親バカ子バカ」は笑いと涙のある流石の物語でした。
今回は松竹新喜劇という伝統文化を和歌山県の皆さんに観てもらいたいと思っての公演であり、収益金の一部を南方熊楠記念館に寄贈してくれました。松竹新喜劇の文化に触れる機会をいただいたことに感謝しています。