大塚耕平参議院議員から「日本経済について」を学びました。大塚議員は元日本銀行の職員であったことから、現在の金融政策について分かり易く説明をしてくれました。
またマネタリーベースと金利の関係についてです。マネタリーベースとは、日銀から民間銀行に入るお金のことです。よく似た用語にマネーサプライがありますが、これは民間銀行から民間企業に融資するお金であることの違いがあります。参考までに、日銀は民間銀行以外に直接、融資をすることはできません。
さてマネタリーベースは過去において注目されていないことから1995年頃までは上昇していませんでした。日銀の金融政策の主力は金利の上下動だったからです。マネタリーベースが著しく上昇していくのは、2013年頃からです。この頃までマネタリーベースは約100兆円でしたが、その後は上昇を続け現在は400兆円を超えていますから、実に4倍の水準になっています。それだけ民間銀行にお金が供給されていることになります。これだけの金融緩和をしているのですから民間銀行から民間企業に貸し出しをすべきですが、実態はそうなっていないようです。
またマネタリーベースと円相場を見ると、マネタリーベースが増加し始めた2013年頃から円相場は上昇傾向にあります。円高ドル安に歯止めをかけているように映ります。しかし急激なマネタリーベースの上昇と比較すると、思っているよりも円安になっていないようにも読み取れます。
そしてマネタリーベースと株価を比較しても同じ傾向にあることが分かります。マネタリーベースが増加し始めた2013年頃から株価は上昇していますが、マネタリーベースと比較して株価の上昇カーブが緩いように読み取れます。
もうひとつの指標が国債発行量との関係です。マネタリーベースを増やそうとすれば、それと同等の国債を発行する必要があります。マネタリーベースが増加すると国債発行も同程度増加することになります。当たり前のことですが、2013年頃から国債発行量が飛躍的に伸びているのはマネタリーベースが伸びていることと相関関係になっています。
戦後、高橋是清が国債を大幅に増加発行し、その後、支払いをしなかったことから昭和20年代の物価は300倍のインフレになったことがあります。現在はその時以上に国債を発行しているので発行してもよいと思われる水準を超えているようにも思います。
また日銀保有の国債の平均残存期間は、2013年3月末時点では3.88年だったのに対して、2017年1月末では7.38年になっています。実に残存期間は2倍になっているのです。それだけ日銀は長期国債を発行し続けていることが分かります。
そしてマネタリーベースと日銀の総資産の対名目GDP比率を見ると凄い数字になっていることが分かります。
マネタリーベースの対名目GDP比率は2013年3月、29パーセントでしたが、2017年2月末では80パーセントになっています。この間、右肩上がりで上昇を続けています。
また日銀の総資産の対名目GDP比率は2013年3月で33パーセントだったのに対して、2017年2月末では90パーセントになっています。つまりわが国のGDPの90パーセントが日銀の保有している国債であり、日本経済と同規模の国債を日銀が保有していることになります。この数字は如何なものかと思います。
日銀がこれだけ政府のために国債を引き受けているのであれば、地方債も引き受けて欲しいと思います。日銀が増加させ続けているマネタリーベースで和歌山県債を引き受けてもらえると県財政は助かります。日銀が行う景気対策はマネタリーベースを増やして国債を引き受けるだけではなくて、地方債も引き受けてもらえると道府県は大いに助かります。
既に日本経済と同規模の国債を保有しているのですから、その内の一部でも地方経済のために地方債を保有して欲しいところです。
金融政策は国策ですが、地方にも効果を持たせるためには日銀が地方債を引き受けてもらうことも考えて欲しいと思います。過去と比較した現状を見ると将来の展望が分からなくなります。現在日銀が保有している国債の償還時期が到来すると経済は一体どうなるのか分からないことが分かるなど、金融政策の勉強になりました。