「前回会った時は立場を知らなかったけれど、何故か堂々していると思っていました。和歌山県の県議会議員だったのですね。初対面の時に言ってくれたら良かったのに」と微笑みながら挨拶をしてくれました。
この活躍されている方に前回お会いした時に名刺も出さなかったのは、議員の立場で面会しに来たと思われたくなかったからです。人間性を見てもらい評価してもらった上で、お付き合いしてもらえるなら、今後もしてもらいたいと思ってのことです。今回の再会につながったのは、言葉の端々から人柄を気に入ってもらえたからだと思っています。
懇談する中で、大きな仕事を仕上げるためには核となる部分を大切にしながらも、そこだけに凝り固まらずに大局観を持って見ることだと教えてもらったように思います。
もう一つ大切なことは、歴史を知るということです。現在、存在しているしくみには歴史があります。過去から現在に至るまでの経緯を学び、何故、そのしくみや仕事が存在しているのか、その意味を把握することが大事なことです。歴史を知らなければ「そんなことはあり得ないだろう」と思って諦めてしまう場合があるからです。
どんなものにも表と裏があります。現在であれば表の姿は報道や情報がありますから、そのことを容易に把握することができます。ところが裏の部分を知ることは困難です。大切なものは見えないものですが、大事な交渉や駆け引きなどは見えないところで進められています。見えないところでどんな話が交わされているのか、どんな進め方をしようとしているのかなどの情報を把握することが真に大事なことなのです。
裏の情報を知らなければ、誰でも知ることが出来る表の情報だけで動くことになりますから、上手く行くことは稀になります。「表の情報はテレビを見ているようなもので、概要は把握することが出来ますが、裏の情報は壁に空いている小さな穴を覗いているようなもので全体像を把握することは困難です。ですから裏の情報を得るためには、その穴の向こうに行く必要があります。誰もが行くことは出来ませんから、本質に精通した人を知ることか、情報を共有できる信頼できる仲間を持つことです」と話してくれました。
確かに、穴の向こうに出入りしている人と直接会って話を聞くことが本質を把握できる最大の方法です。でもそんな立場の人と出会うことは奇跡のようなものです。
「どうしたら会えるのでしょう」と野暮な質問をしたところ「運が良いことです」という答えが返ってきました。僕も運だと思っていたので「やっぱり」と答えました。
運のある人が本物と出会うことができると思います。偶然とも思える運ですが、運は素直な人、何となく好かれる人、社会から信用がある人、積極的に行動する人の下に訪れるものだと思います。待っていて運が訪れることはありませんし、自ら動かないで運が近づいてくれることもありません。運は公平なものではないことを知っておくべきです。
そして気を付けなければならないことは、人は自分の経験から予測できることだけを信じる傾向にあるということです。自分の経験を遥かに超えたことを信じることはできないのです。ですから社会と接点が少なかったり、社会的立場のある人の知り合いが少なければ、本質を知ることはできませんし、知り得たとしても信じることはできないのです。自分の経験と照らし合わせると「そんなことはない」と思ってしまうからです。
でも立場のある人と出会うことは凄いことなのです。自分の経験値を超えた話を聞くことができますし、社会で起きている出来事の本質を知ることができるからです。自分の経験値を超えたそれを信用する器量があるかないかで、その後が変わっていきます。経験していないことや知らない世界の動きを理解できれば、余裕が生まれ活動の幅が広がります。
まずは現場に行くこと、人には会ってみることが大事なことです。行動を起こさないことには何も始まりません。