情報を得るために必要なことを教えてもらいました。それは「同じ集団や同じ価値観の人ばかりと付き合わないで、仕事と関係のない職種の人と付き合うこと」です。人は同じ価値観の人といる方が精神的に楽で居心地が良いので、無意識のうちに楽な方を選んでいます。そうすると同じような情報ばかり入ってくることになります。同じ職場や同じ価値観の人同士での情報交換は、基本は同じ情報なので、違う分野のことには弱くなってしまいます。できれば異業種の人との交流機会を持つことが大切になります。
そこで「最近、情報が入らないのはみんなが優等生になっているからだと思います」という意見を聞かせてもらいました。
どういうことか尋ねたところ「やんちゃな人ともつきあわなければ、必要な情報は入ってこないということですよ」と話してくれました。そこから先のことは記しませんが、良くわかる説明でした。
人は幅広く付き合いをすることでたくさんの情報が得られ、そこから行動を起こすことが出来ます。同じ行動を起こすのであれば、目的に最短距離で到達でき、間違いのない道を選びたいので、情報を得ることはとても大切なことです。
インバウンド観光で一番大切なことは地元からの情報発信です。行きたいと思うか、行きたいと思わないかは観光客の判断になりますが、観光行政としてはその判断ができるだけの情報を発信する必要があります。単にホームページに観光地の写真を掲載しているだけだったり、簡単な解説を掲載しているだけでは観光客は来てくれません。行きたいと思わせる観光地に必要なことはその地域にあるストーリーです。景観や自然の美しさにストーリーを作ることは難しいので、その地で活躍した人物やその地で伝えられている歴史のストーリーが必要となります。
観光客はこれから行こうと思っている地にストーリーを期待しているのです。ストーリーには歴史上の人物やその地に纏わる歴史、食べ物などが含まれます。しかも人物を描く場合は、正史を基本としながらも、その人物の伝説や言い伝えもストーリーに含めるべきことです。僕も坂本龍馬のファンの一人ですが、人物を知ったのは正史ではなくて司馬遼太郎氏の「竜馬がゆく」でしたから、司馬氏のストーリーによってファンになったものです。もし、正史を読んだだけでファンになっていたかどうかは分かりません。小説から入り、そこからその人物に興味を持ち、正史などを調べていくことが人物を知ることや観光に行く要素になると思います。全くの作り話はいけませんが、言い伝えや残されているものから推測できる人像をストーリーにすることは観光施策の手段として間違いではないと思います。
ところで外国人が日本に来るのは異日常を体験するためです。日本では当たり前のことでも外国人から見ると驚きや珍しいことが異日常と言います。もうひとつ非日常も求めて来るのですが、これは歴史や自然などに接することを指しています。観光地は、異日常と非日常の両方を備えた地域であることが必要となります。
異日常が食べ物や体験であるなら、非日常は歴史や人物に触れる体験だといえます。和歌山県ではわかやま歴史物語として、100の旅モデルを作り発信しようと企画しています。とても良い取り組みですから、ストーリーの面白さとストーリーの発信力が問われることになります。人物中心にストーリーを作り、歴史と食べ物までを含めた旅モデルに仕上げて情報発信をすることで和歌山県の観光は深みを増し、インバウンドだけではない観光客の増加につながると思います。
完成した歴史ストーリーは、県が独占して活用できないコンテンツにするのではなくて、著作権フリーのアーカイブ化を図り、観光やITの民間事業者が活用できる形にすべきです。
県はコンテンツを作り、情報を発信する、そして来てくれたお客さんをお迎えする体制を整えることが役割で、民間事業者がコンテンツを加工するなどして付加価値を付けて発信するビジネスに展開していくことを期待すれば良いのです。ですから民間事業者に活用してもらえるコンテンツ作りが重要となります。コンテンツの活用に制限を設けるようなことは愚の骨頂ですから、そんなことはしないで欲しいと思います。
そして観光で大事なことは、来てくれた人が母国に帰った後、「良かった」と思ってくれて、SNSで発信してくれることです。観光客がSNSで観光情報を発信してくれることが、観光地にとって必要なことです。観光客が、美味しかったと思ったお店の店主と肩を組んで写真を撮る。それをSNSで発信してもらうことが観光客の増加につながります。観光地で流行っている飲食店がありますが、その理由は多くの観光客と店主が肩を組んで写っている写真がSNSで発信されていることが原因の事例はたくさんあります。普通のおじさんと、おばさんに人気がでて、「そのお店に行きたい」、「その人に会いたい」と思って訪れる観光客が多いことがあります。
そのためにはSNSに「楽しかった」、「美味しかった」、「また行きたい」と簡単な感想を書き込んでもらうことが重要になります。コメントが増えることで「見つけやすくなる」、「見つけてもらえる」ようになるからです。情報は発信することも大事ですが、見つけてもらえることもとても大事な要素になっています。
そこまでつなげることが観光施策として必要なことですから、わかやま歴史物語もSNSを通じて広がるような施策にしたいものです。