活動報告・レポート
2017年2月18日(土)
科学技術研修会二日目
浜岡発電所

研修会の二日目は静岡県にある浜岡発電所を訪ねました。浜岡発電所は地震対策で稼働を停止している原子力発電所です。同発電所は1号機から5号機までありますが、1号機と2号機は平成21年1月30日に運転を終了していて、現在は廃止措置を行っているところです。また3号機と4号機は適合性確認審査中で、5号機は海水流入事象に伴う対応中になっています。今回は原子力発電所の地震対策と津波対策の状況を確認し、実際に現場に入らせてもらいました。

地震対策として発電所内部の配管のサポート工事などを行っています。津波対策としては、高さ22メートルの防波壁の建設や建屋外壁の強化、電源機能強化として海抜40メートルの高台へのガスタービン発電機の設置や交流電源車の設置などを行っています。

発電所を取り囲むように防波壁と改良盛土が作られていて、高さ22メートル、総延長1.6キロメートルの巨大な防波壁の下に立つと、これだけの防波壁を越えてくる津波は想像できないと思いました。

また浜岡原子力館では実物大の原子炉や実物大の防波壁を見ることが出来ます。実物大の模型を見るとその大きさに圧倒されますし、この技術力の高さを思わずにいられない程です。そして安全対策で分かり易かったのは安全性向上対策を紹介する発電所の全体模型です。地震と津波対策と重大事故対策に関する安全性向上対策を紹介してくれる大型の模型は、初めて見る人にでも安全確保のための対策が分かるように作られています。

多くのことに言えることですが、報道や人伝いだけでは本当のことは分かりません。大切なことは実際に現場に行くことや携わっている人の話を聞くことです。問題を考えるに当たっては、現場を見て、関係する人の話を聞いた上で、自分で判断することが大切なことだと思います。

今回の浜岡原子力館での地震対策と津波対策の説明はとても分かり易いものでした、発電所現場に入ってその安全性向上のために必要な対策の進捗状況を見て、国の審査基準に適合するための真摯な取り組みを感じることができました。

化学技術の安全性の追求は、科学技術を手に入れた人類の永遠の課題です。どんな化学技術でも100パーセント大丈夫と言い切れるものはないと思います。自動車や飛行機、電車、携帯電話もそうだと思います。しかし利便性や快適性と安全性の不安を天秤にかけて社会で許容するかしないかの判断をしています。利便性や快適性が安全性の不安を大きく上回っているなら、その科学技術を社会で許容するという選択をしてきました。

社会で許容された科学技術は、安全性を100パーセントに近づけるための技術改良や科学技術に関わる人の安全意識の向上と安全行動が求められてきました。科学技術に絶対はないけれど、絶対に近づける技術改良や研究、日常の安全行動などを信頼して社会で受け入れてきたのです。

そして私達は、過去のどの時代よりも豊かで快適な生活を過ごすことができています。社会の進歩に寄与する科学技術を受け入れる社会で生きているからです。もし100パーセントの安全性を確認できる科学技術でなければ受け入れない社会であったなら、現在の快適で利便性の高い豊かな生活は存在していなかったと思いますし、化学は進歩しなかったと思います。

失敗があっても人類の科学はそれを克服することを信頼して、完全に近づこうとしている過程の科学技術を受け入れてきたのです。人類の進歩を後退させるような選択を是とするのか、それとも人類の英知を信じるのか。そんなことを考える契機となりました。

物事の是非を判断することは難しいと思いますが、現場に行くことやそれに携わっている人や専門家の話を聞くことで判断材料を持つようにしたいと思います。

二日間に及び参加した研修会は貴重な経験になりました。