平成29年は大政奉還150年、陸奥宗光没後120年の年であり、平成30年は明治維新150年の年で、フランスで日本博が開催される年になります。また日墨修好通商条約130年記念の年でもあります。その後の流れを見ると、平成36年は陸奥宗光生誕180年の年であり、平成37年は日英通商航海条約130年記念の年になります。このように近代日本を作っていった年を思い出させる節目の年が続くことになります。特に幕末から明治にかけての節目の年には内閣府が記念式典などを計画しているようなので、陸奥宗光外務大臣を輩出した和歌山県としても参画することを考えて欲しいところです。
明治時代は列強からの独立を目指して知恵を巡らせ行動を尽くした時代であり、近代国家の礎を築いた時代だと言えます。
中でも陸奥宗光の果たした役割は大きく、坂本龍馬の意志を継いで近代国家の基礎を築いた人物だと思っています。言うまでもないことですが、明治政府における陸奥宗光の主な足跡などを以下に記します。
明治21年(1888年)に駐米公使となり、同じ年に駐米公使兼駐メキシコ公使として、メキシコ合衆国との間に日本最初の平等条約である日墨修好通商条約を締結することを成功させました。
第2次伊藤内閣に迎えられ外務大臣に就任し、明治27年(1894年)にはイギリスとの間に日英通商航海条約を締結させ、幕末以来の不平等条約である治外法権の撤廃を行いました。その後、アメリカとも同様の条約に調印し、続けてドイツ、イタリア、フランスなどとも同様に条約を改正させています。陸奥外務大臣の時代に、不平等条約を結んでいた15ヶ国すべてとの間で条約改正を行い、治外法権の撤廃を成し遂げています。
その後、関税自主権回復と領事裁判権撤廃が明治政府の課題として残ることになり、日露戦争後の1907年に締結された日露通商航海条約で初めて関税自主権を回復させています。その後、1911年にアメリカを始めとする列強は日米通商航海条約などを締結し、完全に関税自主権を回復させました。実に明治44年になって不平等条約を撤廃させたのです。明治時代は不平等条約の撤廃が命題であり、陸奥宗光が切り拓いた不平等条約撤廃の取り組みは明治44年になって全て実現したのです。
その後と現代の日本があるのは、明治時代の偉人たちの情熱と近代国家を築こうと行動した賜物だと思います。
参考までに陸奥宗光は、蹇々録において「政治はアートなり。サイエンスにあらず。巧みに政治を行い、巧みに人心を治めるのは、実学を持ち、広く世の中のことに習熟している人ができるのである。決して、机上の空論をもてあそぶ人間ではない」と語っています。
現代において生きている言葉です。
幕末のヒーローと言えば坂本龍馬ですが、その龍馬が可愛がった陸奥宗光も明治政府で偉大な足跡を残しています。
坂本龍馬については現在、坂本龍馬没後150年特別展覧会が開催されています。京都国立博物館で開催された後、長崎歴史文化博物館で開催され、今後は東京都江戸東京博物館と静岡市美術館で開催される予定とになっています。また平成29年には坂本龍馬の資料巡回展が岡山県、熊本県、東京都、広島県の四か所で開催されることになっています。
坂本龍馬と縁の深い陸奥宗光の故郷和歌山県としても、これらの展覧会を見ているだけではなくて開催県に名乗りを上げる気概を示して欲しいと思います。坂本龍馬の意志を継いでその思いを明治政府で実現させていったのは陸奥宗光だからです。
大政奉還から明治維新、そして不平等条約撤廃と近代国家の形成と、坂本龍馬と陸奥宗光の活躍は現代で紹介したいものであり、和歌山県こそこの歴史を展覧会や講演会などで紹介するのに相応しい県だと考えています。