「世間話は決して無駄ではないよ」という話を聞かせてもらいました。交渉や会社の案件を相手に説明する場合、馴染みであってもなくても、最初は世間話から入ります。世間話は場を和ますことや相手の関心事項を知るため、そして本題に入るために会話を盛り上げておくためなどに必要なことです。いきなり本題に入ると堅苦しいものになりますし、相手が関心を持ってくれるかどうかの反応も分かりません。
ですから世間話は無駄ではなく本題に入る前に必要なものなのです。世間話と言っても本当に無駄な話にするのではなくて、本題につながるような世間話にすることで無駄ではないものとなります。
約束の時間に訪問する場合、約束の時間の数分前に会社近くに着いて待機をすることは多くの人がやっていることです。話をしてくれた方は状況にもよりますが、時には約1時間前に到着することもあるそうです。そんなに早く到着して何をするのかと言うと、面談する相手に会う前にその会社や組織の各部門の知人などを回り、話をするそうです。各部門の担当者から最近の会社の状況や動向などを聞き取っておくのです。そして約束の時間の数分前に役員室などに訪問相手を訪ねて話に入るようです。
その会社の社長や役員は会話の中に、最近の会社の状況のことが織り込まれていることから会話がスムーズに展開していくそうです。余りに会社事情に詳しいと「よく当社のことを把握していますね」と喜ばれることもあるようです。情報はインターネットなどから得るものと人から得るものの両方が必要です。最新で生きた情報は人から得ることが多いので、事前に関係者と会って情報を得ておくことが実のある世間話になります。
そんな話を織り交ぜることによって話は弾んでいきます。相手が雄弁になったり機嫌が良くなった時がチャンスです。タイミングを逃すことなく本題を切り出すそうです。例えば30分の時間の中で本題に要する時間は5分程度だそうです。交渉で大切な5分のために25分を費やすのです。
訪問して挨拶を交わした後に本題を切り出すと5分で用件は済んでしまいますが、いきなり本題に入ってしまうと、求める結果が得られるとは限りません。むしろ心の通わない会話になり、結果が得られないで次回に持ち越すことも考えられます。
交渉で大事なことは信頼関係を結ぶために費やす時間です。試合前のキャッチボールのように相手のことを知る時間や心を通わせる時間が必要なのです。よいプレイをするためには事前準備が不可欠であるように、交渉は本題に入るまでに費やす時間と信頼関係を築くための時間が不可欠です。その時間を無駄と思うのではなくて、必要な時間だと考えたいところです。
交渉の下手な人は世間話や無駄話の効用が分かっていませんから、相手にとってはつまらない自社の宣伝から入ります。セールストークで時間を使い、相手の意思確認をしないで交渉を終えてしまいます。結論を得ないでも時間を掛けて説明を行ったことで満足していることがあります。
つまり人が関心あるのは人ですから、その人に関心を持っていれば関心を持って説明を聞きますし、理解も納得もしてくれます。その人に好感を持っていれば、その人の会社にも製品にも好感を持ってくれます。会社や製品よりも、まずは人が大事です。自分を磨くことが仕事の質を高めることになります。
本題につながるような有益な世間話ができることが、無駄な時間を無駄でないものに変えることになります。世間話が無駄だと言う人は、後につながらない無駄な世間話しかできない人だと思います。