「近大マグロはなぜ成功したか」の講演を聞かせてもらいました。かつて近畿大学理事長が和歌山県南部を訪れた時、漁師の若者から「戦後復興のために頑張ると言っているけれど、どんな方法で復興するのですか」と質問を受けました。その時、理事長は背後の海を指して「日本には海がある。海を耕すことで日本を復興させる」と答えたのが近畿大学水産研究所の始まりです。
近大がクロマグロの養殖に取り組み始めたのが1970年のことで、完全養殖を成功させるまでに32年間を要しています。32年間も研究をつづけたこと、そしてブランド化を進めたことで、ようやく事業として成り立つようになりました。
クロマグロの完全養殖が成功したのが2002年ですが、当初、養殖マグロは全く評価されていませんでした。売り込みに行くと「単なる養殖だろう」、「俺たちはプロで、マグロの味は知っている」、「養殖したマグロなんて売れない」、「ブランド化なんて無理、無理」など相手にしてもらえなかったようです。
諦めそうになったのですが、近畿大学水産研究所には格言がありました「わからないことは魚に聞け」という言葉です。つまり分からないことがあれば現場に行くことが大事であると先人たちは伝えてくれていたのです。そこで全国の関係者を訪問し、近大マグロの評価を聞き取り、ブランド化できるものがないかどうか探して回りました。
なかなか見つからなかったのですが、お客さんと寿司屋の大将からの一言がブランド化のヒントになりました。
お客さんの一言は「大学のマグロだったら安心ね」という一言でした。それまでは大学で研究している養殖マグロだから後ろめたい気持ちがあったのですが、この一言で安心がブランドだと気付いたのです。
寿司屋の大将からの一言は「俺は中学しか卒業していないけれど、このマグロは大学を卒業しているんですよ」と言ってお客さんに提供しているという言葉でした。「大学卒のマグロ」はブランドになると感じ、近大マグロに卒業証書を添付して出荷することを思いついたのです。
安心と大卒マグロの広報で、一気に注目度が高まり近大マグロとしてブランド化できることになりました。ブランドとは消費者に信頼されることの証明ですが、自分でブランドと言うことはできません。人の心の中での評価なので、ブランドとして認識してもらうにはとても時間がかかるものなのです。
ブランド戦略で射る矢は的に当てたいと思うものですが、実は的に当てることを狙うよりも、的を射続けることが大事なのです。強く願って挑戦すること、諦めずに行動することが壁を壊すことができる武器になります。強い信念と行動が目標を達成できる鍵となります。
ハリウッドにジョークがあります。俳優志望の青年が面接を受けに来ました、面接官が「君の特技は何ですか」と質問をしました。若者は「鳥の真似をすることです」と答えると、「ここには鳥の真似をする俳優は腐るほどいる」と言って、若者はその場で不合格となりました。不合格になった若者は部屋の窓を開けて飛び立って行ったのです。
不合格になったのは「鳥の真似ができる」と答えたからで、「空を飛べます」と答えていたら若者は合格していたと思います。ブランド作りのためには言葉、言い方がとても大事なのです。他と差別化できる言葉を使うことが、社会や消費者から認められるために必要なことです。ハリウッドのジョークからも学ぶことが出来ます。
強く願うと必ず夢は叶います。強い信念と行動が伴う必要がありますが、強い願いは叶うことを信じて行動したいものです。
ガバナー諮問委員会が開催され、和歌山市内の8ライオンズクラブの会長、幹事が集まりました。各クラブの活動状況と地区委員会からの報告などがあり、平成29年につなげることを確認しました。