研修会の最後にパティシエ・エスコヤマ三田店に立ち寄りました。エスコヤマの名前は鳴り響いていますが、お店に行ってみてその凄さを実感することができました。駐車場を見ると三田市のお店まで、お客さんがたくさん来ていました。エスコヤマが三田市の観光名所の一つであることに疑いの余地はありません。特に若い女性は単なる観光地よりも食や体験することを求める傾向があるように思います。美味しいものがあれば遠くてもそこに出掛けるようで、それは観光に出掛けるような感覚だと感じます。
エスコヤマは三田市のウッディタウンと呼ばれる住宅地の中にあり、ショッピング施設や観光地の近くにあるものではありません。普通の住宅地の中にお店がありますが、そこにお客さんを引き付けることは驚きです。
そして三田市に出掛ける理由はエスコヤマのスイーツを買うためで、それ以外の目的はないというお客さんもいるようです。男性には理解しにくいことですが、景勝地に行くよりもおいしいものを食べることや、それを買うためにお店に出掛けることは珍しいことではないようです。
お店で驚いたのはエスコヤマに出来ている行列です。遊園地のアトラクションを待っているような行列で、お客さんは店内に入ると楽しいことが待っているような表情をしています。目的があるから待つことができるし不満もない、そんな感じがしました。
むしろ楽しさに出合うためには並ぶことが必要である。そんな感覚がありました。ここでは並ぶこと、写真を撮ること、期待感を持てることが楽しみであり、待ち時間もアトラクションの一つのようです。
観光に来てもらうためには、食というテーマが大きな武器になると感じました。名所旧跡がなくてもおいしいものを食べること自体が観光になるのです。和歌山県内でも決して交通の利便性が良くない場所で、周囲に観光地がないところでも、おいしいレストランやパン屋さんがあれば県外からもお客さんが来ています。そのスケールを大きくしたようなお店がエスコヤマだと感じました。スイーツが強力な観光資源になっている。この地域だけで購入できる地域のブランドが観光資源になる時代です。これは観光推進を図る上でとても参考になるものです。観光行政とは観光地のハード整備をすることも大事ですが、スイーツのお店やレストランと連携して、地域独自のおいしいものを提供することを目指すことも大事なことだと分かるからです。
観光行政は地域内の公平性を謳っているため、お客さんを引き寄せられるお店と連携することに躊躇する部分がありますが、お客さんの関心が強く、県外から呼び込めると思われる商品を取り扱っているお店と連携することも必要なことだと考えました。お客さんを呼び込めるような地域にある良いものをPRすることは決して間違いではありません。
お店、スイーツなどの食べ物、それを開発している人を観光行政として発信することは必要なことであり、おいしいもの、他ではないものであれば県外からも集客できると思います。今回思ったことは、人を売り出すということも大事なことだということです。この人の作ったスイーツや食事を食べたい。この人に会いたい、この人の話を聞きたいと思わせることも観光だと思います。
観光行政のあり方を考え直す必要性を感じるほど、住宅地の中のお店が県外からたくさんのお客さんを呼び込んでいる光景は衝撃でした。地域には人という財産、価値のある商品という財産が潜んでいます。それを発掘して売り出すことも観光行政だと思います。
一緒にエスコヤマを訪れた皆さんの笑顔と嬉しい表情が研修会の満足度を高めていると思いました。人を呼びこむ力が観光です。観光力は景勝地や従来の観光地が持っているだけではなく、人や食べ物も観光力を持っています。