活動報告・レポート
2016年10月23日(日)
経験からくる教訓
経験からくる教訓

経験豊かなYさんから、現役時代の話を聞かせてもらいました。会社を経営していましたが、バブル崩壊と共に会社を閉じています。そこで得た教訓は、「話は半分ぐらいに思うぐらいが丁度良い」ということだそうです。投資話で事業プランが持ちかけられることがありますが、大部分は話半分だそうです。

Yさんが知人からの事業計画を信用して出資したところ、原材料の納品が予定の半分以下だったことがあったそうです。この原材料が年間40万トン調達できれば採算が確保できることが経験から分かっていました。事業計画では最低でも年間50万トンは確保できるという説明があり、Yさんが関係者などから市場調査をしたところ「大丈夫」ということだったので出資したのです。

ところが初年度入ったのが20万トンで、二年目からも20万トンが入荷しただけでした。一年間で約1億円の赤字が発生したので二年間で2億円の損失が出ました。三年目はどうするか考えたのですが、「状況は回復するから大丈夫」という言葉を信用し事業を継続することにしました。

そんな状況が8年続き、ようやくこの事業に見切りをつけて撤退することを決めたそうです。Yさんは「早く損切りしておけば良かったと思っています。赤字がでていたので原材料さえ入れば損失を取り戻すことが出来ると思っていました。今でもそう思っていますが、私の市場調査が甘かったということです」と話してくれました。

勿論、バブル崩壊も原因だと思いますが、バブル崩壊は、この日を区切りとしてバブルが崩壊しましたという線はありません。ですから判断する時期が遅れていったのです。結果から見ると「もっと早い時期で判断できた」と思いますが、渦中にいると分からないものです。

この事業の失敗が原因でYさんは会社を閉じ負債を清算しました。自宅や工場も担保物件にしていたため故郷を離れ、知人を頼って和歌山市に来たのです。現在はゆっくりとした生活を過ごしているため、現役時代の姿を知る人はほとんどいません。しかし事業で成功し、その後事業で失敗した経験から「人の話は半分ぐらいに聞いておくこと」という教訓を教えてもらいました。

そして「人は良い時は近寄ってきますが、悪くなると離れていくものです」と話してくれたように、事業家は事業と共に存在しているように感じました。今では事業家としての姿はなく、人としての生活を過ごしています。「もう年ですから策略の渦巻く事業の中には飛び込んでいけませんわ」と話してくれました。

人は経験から教訓を得ます。その教訓を次に生かすか、後に続く人に残していくかすることになります。ですから経験は次のつながる財産となるものです。経験者の話を聞くことで得られるものがありますから、Yさんの教訓話に感謝しています。

告別式

昨日の通夜式に引き続いて告別式に参列いたしました。三度の手術と闘病生活の末、お亡くなりになったYさんの奥さんの告別式です。会場にいると親族の悲しみが伝わってきて、「この世では最後には別れが待っている」ことを痛感しました。誰でもいつかは旅立ちますから、それまでの間は、人には親切に接し、笑顔と優しさが必要だと思います。人に施したものが後に残るものだと思います。

人に優しく接していれば、後の人達には優しさが残ります。笑顔で接していれば、悲しみの後に笑顔が蘇ります。「ありがとう」の言葉を残して逝った人には、多くの人の心に「ありがとう」の言葉が広がります。

残したいものは持っていることではなくて、あげること、譲ること、分け与えることなのです。与えたものが後に残るものだと思います。

多くの人に親切を与えたYさんの奥さんは、親切さを皆さんの心に残してくれました。