熊本市の隣にある益城町に入りました。益城町に入ると震源地に近かったことから、熊本市よりも被災していることが分かります。家屋が倒壊し道路が歪み、電柱も傾いています。そし益城町体育館が避難所になっていますが、多くの被災者の方々がここで生活を行っています。地震発生から三カ月が経過していますが、依然として避難所での生活を余儀なくされている皆さんのご健康と、一日も早く自宅に戻れることを心からお祈りしています。
さて避難所ではペットとの共生について説明をしてもらいました。避難所である体育館の裏側にドッグランを設置しています。ドッグランと併設してペット用の施設が設置されています。ペットと共に避難所に逃げている人のためにペット用の施設を設置しているのです。
このペット施設は被災直後にはありませんでした。しかしペットの好きな人と嫌いな人との間でトラブルが発生したことから、益城町ではペット専用の施設を設けたのです。このことで被災者間のペットに関わるトラブルはなくなりました。
運営費は環境省が予算化し益城町に交付して、この施設を運営できていることになります。当初、益城町は避難所で人とペットとの共生という考えはありませんでした。避難者のための施設ですし、人の命を守ることを目的としていますから当然のことです。
しかしペットを家族の一員と思っている被災者もいますし、ペットが心の支えとなっている人もいます。そんな人の心が折れないように、被災者のペットの扱いを考えるようになりました。
環境省はペットに予算は配分してくれませんが、被災者に対しての予算化は考えてくれます。そのため被災者のためにペット専用施設を設置し運営することが、避難所内でのトラブル減少とペットと生活をしていた人のケアにもつながることを直訴し、予算化か図れることになりました。避難所にペットの宿泊施設、ドッグランがある場面は初めて見ることができました。
案内してくれた運営者は「避難所における人とペットとの共生は被災時の大きな課題だと思います。ペットを大切にすることは人を大切にすることにつながるからです。ペットが嫌いな人がいますから、避難所内でペットと共に生活することはできませんし、それは共生ではありません。しかし避難所外にペット専用の宿泊場所を設けることはペットの共生になります。ペットが嫌いな人でも共生が可能となるからです」と説明してくれました。
何度かの大震災を経験した後の避難所運営のあり方が変わってきていることを感じました。避難時の人とペットとの共生については過去に和歌山県議会で取り上げたことがありますが、当時はまだ議論が噛み合わなかったように思います。しかし時代は変わり、益城町の避難賜所では人とペットとの共生が実現しているのです。驚くと共に「時代は変わっている。ようやく人とペットとの共生が現実の姿として存在している」と思い感動しました。
「今回、このペット施設の運営に携わって、ペットと共生できる環境を築くことは、結局、人のためになることが分かりました。ペットを巡る避難所内でのトラブルはなくなりました。当初はトラブルが何度も発生したので、その度に益城町の職員さんが駆けつけて間に入ってくれました。このことで職員さんの時間がとられてしまうので、職員さんが被災者の方のために他にすべき仕事ができなくなってしまうのです。トラブルがなくなったことで職員さんが被災者のための仕事に専念できることになったのです」と話してくれました。
人とペットとの共生のあり方を示してくれる話でした。だから環境省も避難所内にペットのための施設を設置することの予算化をしてくれたのです。今後の避難所運営に役立つ話でした。
この避難所を経由して学校に通学する子ども達がドッグランの前を通ると、手を振ったり、ペットに声を掛けたりして笑顔になるそうです。ペットが近くにいることで、子ども達にも良い影響を与えているのです。
他の地方自治体でも、防災対策を検討する際には、人とペットとの共生のあり方をテーマに取り上げて欲しいと思います。
その後、南阿蘇村の現場を訪ねてから、熊本市を後にして福岡空港に戻りました。そこから関西空港に戻り視察を終えました。案内や説明をしてくれた熊本の皆さんに心から感謝しています。熊本地震からの復興を心から願っています。ありがとうございました。