岐阜県にある瑞浪超深地層研究所と核融合科学研究所の二か所を視察しました。関西議員団会議の団長として研修会に参加しました。高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究と夢のエネルギーと言われている核融合科学研究所を視察したのは初めてのことで、とても勉強になりました。現代文明と科学の恩恵を受けている私達は、その恩恵を受けることによって生み出される課題を解決しなければなりません。文明と科学の恩恵を受けている現代人の未来への責任です。
エネルギー問題を解決するために必要な地層処分と核融合施設の研究所が岐阜県にあり、関係者の協力を得て今回視察を実現することが出来ました。
まず瑞浪超深地層研究所ですが、地下300メートルの研究坑道まで降りました。縦に300メートルを掘る技術の凄さに驚きましたが、地下の世界を体験したことはもっと凄い体験でした。
地下300メートルまで降りるために、作業用に掘削された縦穴に取り付けられているエレベータに乗ります。このエレベータは円みを帯びている形状で、多くの人数が乗ることは出来ません。300メートルの地下まで行くのに要した時間は約5分ですから、思ったよりも速い速度でした。降りてみると思っていたよりも圧迫感がありませんでした。これは研究者が研究を続けるための環境を整えているからだと思います。
地上から100メートル地下に降りるに連れて気温は2度から3度上昇します。地価は涼しいメイージがあるのですが、実は地上よりも暑い世界なのです。また当たり前ですが気圧も違います。他にも地下水を止める必要があることや、空気を送風することも必要です。
地下300メートルの湿度は約97パーセントでしたから、これは周囲を地下水に囲まれているような状態だということです。
つまり地下の世界は地下水が充満していているので、掘削すると地下水が溢れてくることになります。事実、地下300メートルの研究坑道には、たくさんの地下水が流れていました。ただ地下水が研究坑道に流れ込んでいるのは気圧が違うためです。研究坑道の気圧は地上と同じ1気圧にしているので、この周囲の気圧よりも低い状態になっています。そのため気圧の低いところに水が流れ込んでいるのです。地下水を止めるには気圧を同じにすれば良いので、もし何かを地層処分した後に粘土質の土で固めてしまうと、気圧は周囲と同じになりますから、地下水がこの地点に流れ続けることはありません。
参考までに地下300メートルの研究坑道に流れ込んでいる地下水は約100万年前に降った雨が地面に浸透しているそうです。水はそれほどのゆっくりした流れで地下へ地下へと進んでいるようです。岩盤の堅い地質のだと一年間に数ミリという時間感覚で浸透しているようです。
更に地下には未知の微生物も住んでいるので酸素を分解していることもあるようです。ここでは地層、地下水の流れ、微生物などの研究をしているのですが、人類の未来の研究のためには絶対必要な施設だと思います。
このように空気が薄いこと、気温が高いこと、気圧が高いことなど、人間の暮らしている環境とは全く違う世界があります。人間界から隔離された地下に高レベル放射性廃棄物を埋め自然界の力を借りて管理しようと研究しています。
但し、この瑞浪超深地層研究所は研究施設なので、将来に亘り核廃棄物を持ち込まないことになっています。
初めての体験となった地下300メートルの世界は、地上とは全く違う世界でした。地底は、人が済める環境ではなく、人類のまだ知らない未知の世界があるだけです。未知の領域を研究することが科学であり、人類の進歩にとって必要な研究だと思います。光が届かない、空気も少ない、大量の地下水が流れている。そんな環境を感銘して人類が活用できるように研究していることを知りました。未知の領域に挑むことはロマンを感じるものであり、案内してくれた研究者は「研究者としては他にない魅力的な環境です」と話してくれました。研究の成果を期待しています。
続いて、核融合科学研究所を訪ねました。地上の太陽と言われているのが核融合です。ここでは核融合を起こすために高温のプラズマの状態にする研究を行っています。
核融合は海水からエネルギーを取り出しますから化石燃料などは必要ないので、自国で燃料を賄えます。水3リットルと携帯電話一個分のリチウム電池で、日本人が必要とする一年分の電気を発電することができます。また二酸化炭素を排出しませんから地球環境保全につながります。
子どもの頃から核融合は夢のエネルギーと聞かされていましたが、実験が進んでいるとは思っていませんでした。
核融合が実現するまでには、これから30年以上必要と聞きましたが、未来のエネルギー確保のために研究を続けて欲しいと思います。現役世代が未来への責任を果たすという命題を考える契機となりました。