自殺者の増加は社会問題化していますが、和歌山県では数年前から自殺予防の呼び掛けを行っていることから効果が出始めていると聞いています。その中心的役割を果たしてくれているのがNPO法人 心のSOSサポートネットです。
平成28年9月17日に和歌山県民文化会館小ホールにおいて、自殺予防イベント「第6回 いのち・たいせつキャンペーン」を開催する予定です。
このイベントの主旨は次の通りです。
『日本の自殺者数は14年連続で毎年3万人を超えていました。当NPOは平成23年の設立以来、自死予防ゲートキーパー「こころの安全パトロール隊員養成講座」をはじめ、「職場のメンタルヘルス講座」、「いのちたいせつキャンペーン&シンポジウム」、「災害メンタルヘルスシンポジウム」などを県内各地で開催して参りました。
官民一体の対策強化の効果で平成24年にはその後自殺者数は2万人後半まで少しずつ減少、和歌山県も減る傾向が続いていますが、5歳毎で見ると、10−54歳の若者から働き盛り世代の死因1位〜3位は自殺であるのが現状です。
当NPOでは心の健康を見守る人材を5年間で1千人養成してきました。
しかしまだ目標には達していません。今後も引続きさまざまな活動を続け、すべての世代がいきいき自分の力を発揮できる、心身ともに健康な社会の基盤を作りたいと考えています。
そこでこの度多くの事業主の皆様に活動を知って頂きたく「第6回 いのち・たいせつキャンペーン」では協賛を募ることになりました。事業内容は普及啓発のための音楽会です。長年夏の甲子園でエンディング曲を歌ってきた西浦氏を迎えます。高校野球を応援されたことのある人なら一度はその歌声を聞いたことがあるのではないでしょうか。青少年だけでなく青春を駆け抜け現実と向き合い、頑張り続ける大人へもエールを届けます。』
同NPO法人では、以上の主旨のイベントを行う予定です。
そしてNPO法人心のSOSサポートネットの活動理念については、公式サイトに掲載されている理事長の東睦広先生(日本赤十字社和歌山医療センター精神科部長)が書かれた「ごあいさつ」に分かりやすく紹介されています。
「和歌山でも、救急病院の看護師さんや保健師さんを中心に、自殺未遂者ケア研修などの講師を務めさせていただきました。未遂者のケアの重要性もいうまでもないのですが、それだけでいいのかと考えていました。
私が調査したところ、実は2009年(平成21年)9月から2010年(平成22年)9月までの日赤和歌山医療センターに搬送された致死性の自殺未遂者の方の7割近くが一回目の自殺未遂者でした。
これはどういうことかというと本当に自殺してしまう可能性の高い人は1回目で覚悟の自殺をする可能性が高いということです。
つまり自殺をふせぐためには周囲の方がまず、自殺する可能性のある人を見つけられるようにすることが大切だと考えられます。
しかし自殺する人を見つけることはできるのでしょうか。実は最近の研究から自殺をする方の9割の方が精神疾患に罹患していることが分かっています。
うつ病などの気分障害が多いのですが、ほかに統合失調症、アルコール依存症もあります。
ただしこれらの病気があると自殺するのではなくて、多くの方の場合自殺の直前に大きなストレスを抱えている場合が多いことが分かっています。
最も多いのが癌などの治らない病気になったというような身体的健康問題が多く、そのほか多重負債、失業、経営不振といった社会的問題などが続きます。
大切なことはストレスに耐え切れなくなったあとに精神疾患を患ってしまった状態で自ら命を絶とうとする人が多いということです。
自殺する人は自分が精神疾患になっているとはほとんど気付かない場合が多く、周囲も気付かない。
ですから、このような人を早く見つけ、援助の手を差し伸べることができ、必要な場合は精神科医療機関に受診援助していく能力を持った人を増やす、ということが和歌山には必要なことです。
大事なことは和歌山県民だけでなく、国民一人一人が、自殺は個人の自由意志や、崇高な目的のためであれば肯定される場合もあるなどといった、社会の認識を変えてゆき、自ら命を絶つ人を救うための、心のネットワークを作ろうとすることだと思います。
『心のSOSサポートネット』の設立の趣旨は 自ら命を絶とうとしてしまう人を救うため、人のつながりを作ることです。
その過程で明らかになるリスクファクターに対して柔軟に対処するための活動も行う予定です。皆様にも自ら命を絶とうとする人を支えるための心のネットワークの一員として協力していただければうれしく思います。」
平成28年度の活動の柱である「第6回 いのち・たいせつキャンペーン」開催に関して、県民の皆さんに協力を求めています。このイベントを成功させ、自殺者予防につなげるよう、身体的健康的問題を抱えている人の命を救うという意識を持ちたいと思います。