第五管区海上保安本部の救難・テロ対策訓練に参加しました。和歌山市で実施するのは今回が初めてのことでした。この訓練は巡視艇「せっつ」に乗船し、海上での訓練の様子を間近で見させてもらえた貴重な体験となりました。
訓練場所は和歌山港の沖で、午前10時から正午までの2時間の海上訓練でした。
第五管区海上保安本部は、和歌山県、滋賀県、大阪府、日本海側を除く兵庫県、奈良県、徳島県、高知県の各府県を所管していて、海上の治安維持、交通の安全確保、海難の救助などを行っています。担当水域面積は約39万2千m2で、この面積は日本の国土面積(39万8千m2)とほぼ同じ面積なので、任務は広大な海域の安全確保に努めてくれています。
主な役割として治安の確保があります。これはテロ船などわが国の海域を侵害する船舶を捕捉することを始め、犯罪行為の未然防止に努めています。また海難事故が発生した時に救助活動や、大規模な排出油事案や船舶の火災事故、南海トラフ地震などの自然災害に対応するため災害に備えた体制を整えてくれています。
そして今回の訓練は、漂流者救助訓練、放水訓練、機関砲射撃訓練、高速船隊運動訓練、そして容疑船捕捉訓練を実施してくれました。
漂流者救助訓練は驚きました。海上で救助を待つ人が発煙筒を焚いて救助のヘリコプターを待っているのですが、海上に一人の人が漂っていても存在が小さ過ぎて、発見することは困難だということです。発煙筒を焚いていたから見つけることができましたが、漂っているだけなら発見できなかったと思います。発煙筒が目印になり救助できたのですが、担当の乗組員に尋ねると「実際、海で漂流している人を発見することはとても難しいことです。漂流している人からヘリコプターは見えるのですが、ヘリコプターから漂流している人を見つけることは難しいのです。そのためヘリコプターが飛び去ってしまうと漂流者は『見捨てられた』と思うことがあります。今日、実際の訓練を見てもらって海上で人を発見することは難しいことを理解してくれたと思います」と話してくれました。
大海原で人を発見することは簡単なことではないことを、訓練の現場にいると理解できました。海に出る時は最大限の安全対策を講じてから出て欲しいものです。
また二梃の高速船のスピードには驚きました。乗組員に「この船に乗ると酔いそうですね」と尋ねたところ、「酔っている暇はありませんよ」と答えてくれました。高速船のスピードに対応することと海、船が面に当たる衝撃の大きさなどに耐えることに必死になるので、酔う暇はないということです。そのため高速船に乗ると身体の負担が大きいため、全員が20歳代の乗組員だそうです。
高速船がテロ船を発見し追いかけて銃撃戦を行い、最後はテロ船に乗り込み乗組員を捕捉する訓練を目前で実施してくれました。そのスピードと迫力は圧巻でした。海の上をこれだけの速度で走行することができることに驚きましたし、高速船がスピードを保ったまま小回りで旋回するのは「凄い」としか言いようがありません。
毎日、私達の知らないところで海洋の治安維持に努めてくれている姿を知り、わが国の治安維持をもっと考えなければならないと感じました。海上訓練に参加すると、安全は自然に確保されているものではなくて保たれていることが分かります。安全を保つためには優秀な人材と厳しい訓練、そして迅速で的確な情報把握が必要であることが分かります。そして国民である私達が海上保安本部の役割を知り、応援することがとても大切なことだと思います。
誰でもそうですが「自分の仕事が多くの人から支持されている」と思うことで、自分達の役割は崇高なものだと感じるからです。わが国の安全を守ることは、国家観、使命感、心身の健全、そして国民からの応援が必要です。
海を守る、国を守ることを考える日になりました。