フランスが日本を含む7か国と共同で推薦していた「ル・コルビュジエの建築作品」ですが、ユネスコの諮問機関イコモスが世界文化遺産への登録がふさわしい旨の勧告をしたと発表されています。この推薦名称は「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」ですが、この中に国立西洋美術館が含まれています。
この世界文化遺産の推薦はフランスの推薦枠で行われ、平成28年7月10日からトルコ・イスタンブールで開催される第40回世界遺産委員会で登録の可否が審議されることになっています。
和歌山県では「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界文化遺産に登録されていることから、日本から新たに登録されることは嬉しいことであり、今後、世界文化遺産間の連携を図ることができれば、国内の世界文化遺産を観光資源として結ぶことで、世界文化遺産のある都市に外国人観光客に更に来てもらえることが期待できると考えます。
この「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界文化遺産に登録されたのは次のような理由があるからです。
- 日本古来の自然崇拝に基づく神道と渡来した仏教が融合した神仏習合の宗教観により形成された紀伊山地の文化的景観は、東アジアにおける宗教文化の交流と発展をうかがわせる他に類を見ない事例であること
- 紀伊山地の社寺や参詣道には、今は失われた建造物や宗教儀礼に関する考古学的文化財が残され、宗教文化の重要な継承の場になっていること
- 紀伊山地の建造物や遺跡は日本独自の信仰形態の特質を表す顕著な例であり、山岳地帯に残る修行場や神聖性の高い自然物は、信仰に関する独自の文化的景観を形成していること
国立西洋美術館が世界文化遺産に登録されるかも知れないというニュースを聞いた時、嬉しいけれど「何故だろう」という気持ちがありました。その理由は、近代建築の巨匠と呼ばれたフランス人の建築家のル・コルビュジエが設計した日本で唯一の建造物だからだと聞きました。そのためフランスが主体となり、ル・コルビュジエが設計した17の作品を共同で推薦したということです。
登録までの経過は異なりますが心から喜びたいと思います。この建築物とカラヴァッジョの作品を鑑賞する機会を得ました。
ルネサンス史上、最も素晴らしい芸術家と言われているカラヴァッジョは、本名をミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョと言います。わが国でカラヴァッジョの作品が11点も鑑賞できる機会は今後とも訪れないと思いますから、たった一度の幸運に恵まれたと思います。中でも「法悦のマグダラのマリア」は世界初公開で、世界最高の美術作品の一つと言われるだけの「言葉にならない」迫力がありました。
それにしてもカラヴァッジョのこれだけ多くの作品を見ることができたのは奇跡であり、今後の生き方に影響を与えたことになると思っています。優れたものは常に接する人に何かの影響を与えてくれます。芸術が400年の時を超えて、現代人に影響を与えていることは「凄い」と思います。
カラヴァッジョは短い生涯であり、素行も良くなかったと記されていること、そして残っている作品も限られていますが、後世の人に影響を与え続けていることは素晴らしいことです。新しい価値を生み出したルネサンスの時代の空気を感じることができ、新しい価値に基づく行動を求められている現代に通じるものがあるように感じました。過去の価値観を前面に押し出すのではなくて、自分の行動によって価値を創り出すことこそ時代が求めているものだと伝えてくれているようです。
ルネサンスの空気を吸い込むことができました。