組織は違うタイプの人で成り立っていますが、それが組織力を高めていることを話し合いました。先月、北海道大学の長谷川教授が「働かないかないアリにも役割がある」ことを発表しました。集団で行動している働きアリの中には約30パーセントの働きアリが働いていないことは知られていました。しかしそれは組織にとって悪ではなく、組織力を高めるために必要なことであり、働かないアリがいることで組織力は高められていることを発表しました。
働かないアリが存在している理由は、働いているアリが疲れて休憩が必要になった時、その代りを果たしているようです。組織が危機に見舞われた時、普段、働いていないアリはそこをカバーする役割を果たすことが分かったというものです。
このことは、組織は同じタイプを揃えていると状況変化に対応できないこと、危機に直面した時には役立たないと思っていた人が役に立つこともあることを示してくれているように思います。
同じ考え、同じような行動をする人が集まっている組織は効率的かも知れませんが、決して魅力的な組織とは言えません。上司から言われたことに対して忠実に仕事をする人の集団は強い組織とは言えません。忠実に従う人、反発する人、命令に従って行動する人、命令に対しては行動しないけれど自分の価値に従って行動する人などが集まって、強い組織になっているのです。外部環境の変化に対応する組織は、単一性志向ではありません。
サッカーやラグビーに代表されるチームスポーツがこのことを表しています。サッカーやラグビーにはポジションがあり、全てのメンバーがボールに集まることはありません。
今おかれた現状だけを見るとボールに集まることが大切かも知れませんが、この先を予測すれば、ボールを奪う人、相手がパスを出すコースに陣取る人、ロングキックに備えて守備に就いている人など、ゲームと時間を考えてチームは戦うものなのです。
チームが予期せぬ動きに対応するためには、同じ動きをするのではなくて違う動きをすることや、選手がこの先の予測に基づいて動くことが求められます。
会社ではその仕事の権限者が担当者に権限を付与して仕事を分けています。その中には直接利益を生み出していない人もいますが、組織の中で何かの役割を果たしていることが多いのです。危機に直面した時に対応する能力がある人、危機が訪れないように外部の情報を把握している人、または社外人の根回しを得意とする人など、役割分担しながら組織力を高めているのです。
今日、懇談した人が「以前、僕が務めていた職場には、朝から新聞を読んでいるベテラン社員がいました。今思うと、仕事がなくて辛かったか、何かの役割を担っていたのかなと思います」と話してくれたように、働かないアリのような存在だったかも知れません。
組織全体が100パーセントの力で働いている組織があるとすれば、最初は勢いがあるかも知れませんが、直ぐに失速しそうに思います。一つの方向に向くことは良いことですが、ラグビーのフルバック、サッカーのディフェンダーのように、直接プレイに参加していなくても全体を見渡して見えないところをカバーする役割の人が必要だと思うからです。
普段は何をしているのか見えないけれど、一般の従業員が担えないような役割を担い緊急時に動いてくれる人かも知れません。同じ部署であっても、人と同じ動きをする必要はありません。試合中に全員がボールに集中する集団は素人集団だからです。
見える仕事をする人は優秀な人です。見えない仕事をしている人は必要な人です。組織は色々なタイプの人がいて強くなっているのです。働かないアリを排除してしまうと、働いているアリの中から働かないアリが出現し、結局は元と同じ比率の組織になってしまいます。人を排除することは人員が減少し、組織力が低下することにつながります。人を大切にする組織が強い組織だと思います。