活動報告・レポート
2016年2月5日(金)
副読本
副読本
副読本

和歌山県では道徳の授業などで副読本を使用しています。ひとつは中学生向けの「希望へのかけはし」で、もう一つが「わかやま何でも帳」です。それぞれの副読本でエルトゥールル号の事件が取り上げられています。

和歌山県で起きた誇るべき歴史を子ども達に教えることは故郷の歴史に残る誇りを言い伝えることであり、大人になっても語り継いでくれることを期待してのものです。このエルトゥールル号の物語は、何度も書いていますし、映画「海難1890」によって知られることになっているので記すことはしませんが、副読本では村人たちの思いやりの心と心意気が伝えられています。

副読本

この副読本によると、エルトゥールル号で遭難した負傷者の治療を行った地元の医師に対して明治政府は「薬代及び治療代の精算書を作成せよ」という命令が伝えられたそうです。それに対して地元の医師は、「負傷者の惨状を見かねて治療を行ったのであり、治療費を請求するつもりはございません。薬代及び治療費はすべて義えんといたしたく、よろしくお取り計らいくださいますようお願いします」と報告したと語られています。

決して裕福とは言えない村人と共に生活をする医師も裕福な暮らしをしているものではありません。それなのに治療費を請求することなく、医師や村人は負傷者の命を助けるために行動しています。この言動に日本人の美徳があり、和歌山県の誇りが宿っています。

お金のために行動しているのではなく、自分の前で困っている人を助けることが自分にできることだという気持ちが伝わってきます。行動の動機は困っている人を助けることにある。それが明治時代の日本人の気質であり、裕福ではなかった紀伊半島最南端の串本においても同じ気質を持ち合わせていたのです。このことは日本人としての誇りであり、和歌山県が全国に発信したい価値観なのです。

和歌山県では県内の中学生に、日本人の気質と和歌山県人としての誇りを教えているのです。教育において学力は大切ですが、人間力、人格形成も大事なことです。副読本を使って、大事なことを身に付けている取り組みを嬉しく思っています。

今回、文京学院大学の学生の皆さんが和歌山県と串本町に調査とインタビューに入ってくれたことから副読本の存在を思い出しました。「海難1890」が映画化される以前から、和歌山県ではエルトゥールル号事件の歴史を教えています。中学生の時に学んだ大切なことは、大人になっても覚えているものです。それらが日常の行動基準となりますし、困っている人がいたら親切に対応する行動の源になるものと思います。

串本町の子ども達にはもっと以前からエルトゥールル号の歴史を教えていると思いますが、和歌山県としても中学生に対して故郷の誇りである出来事を教えているところです。将来、彼、彼女たちが日本とトルコの友好の懸け橋の一役を担ってくれているかも知れません。そうなった時、日本とトルコの間に新しい物語が追加されることになるかも知れません。歴史は記憶され伝えられ、後の人がその歴史を塗り替えていくことに意味があります。継承すべき歴史は言い伝えることが私たちの役割であり、継承した者は歴史をより良い方向に発展させることが使命です。

和歌山県の中学校ではエルトゥールル号の歴史を継承していく準備が整い始めました。トルコと日本との友情が永遠に続くためにも教育機会を通じて、言い伝えたいものだと考えています。

映画「海難1890」の上映期間も終わりが近づいてきました。街角のポスターが消え始め、インターネットでトップに来ることも少なくなってきました。一過性に終わらすことのないようにこの物語を継承することが和歌山県の役割だと考えています。

その他
  • エネルギー問題に関しての勉強会実施について日程などを話し合いました。現地研究を兼ねた勉強会に仕上げる予定ですから、役員の皆さんから「楽しみにしています」と言う声をいただきました。
  • 夕方からは旧交を温めることのできた懇親会に参加しました。今があるのは、昔の修業時代がありたくさんの経験を重ねてきたからです。その時々に関わってくれた先輩や同僚の方々の応援があって今につながっていることを感じています。楽しくて感謝の気持に溢れた懇親会となりました。
  • いざと言うときに頼める人がいることは頼もしいことです。難しい案件でも道筋をつけてくれますから、後の仕事が容易になります。快く頼みごとを引き受けてくれた先輩に感謝しています。