フラメンコの祭典2015を鑑賞しました。主催する森久美子先生から案内をいただいたことから会場に向かいました。文化の秋に相応しい華やかな舞台がお客さんを魅了しました。
出演したのは森先生のスタジオの教え子達でした。個人的な感想ですが、最初は舞台に慣れていなかったように感じましたが、途中から自信を持って踊り出したように思います。 今日の舞台で一曲踊るために、どれだけの時間を掛けて練習をしてきたのか分かりませんが、一所懸命に練習を続けてきたことだと思いますから、見ていて「間違えないで、楽しみながら踊りきって」と応援したくなりました。
この舞台に立つために要した時間は半年ぐらいかなと思いますが、それでも時間が足りなかったと不安になりながら踊り出したと思います。舞台に立つと、それまでどれだけ練習をしていても、心が不安感に支配されそうになります。普段練習をしているスタジオと、お客さんが観ている舞台とでは全く雰囲気が違いますし、本番用のドレスを着ると更に緊張感が高まるからです。もし舞台経験が少なければ、なお更、緊張感が増していたことだと思います。
最初は全員で挨拶代わりに踊り始めた時は、表情と身体の動きで緊張していたことが分かりました。そして、それぞれの出番となるペアで踊り始めた時には、緊張した顔が途中から自信に変わり、踊り終えた後は笑顔になっていました。舞台に立ったときの緊張感、踊れる、やれると思った時の自信、そして緊張が解けた後の笑顔。今日のフラメンコの舞台を象徴しているような心の動きを感じることができました。
客席から観ていると、和歌山フラメンコ協会が毎年実施しているこのフラメンコの祭典は、ポルトヨーロッパの秋の祭典としてすっかり定着していることが分かります。会場はお客さんで埋まり、スペインからもゲストダンサーを迎えたことも合わせて、舞台を豪華に仕上げてくれました。
舞台を終えた後、森先生を訪ねたところ、舞台を終えてほっとした表情がありました。そして今月、スペインに行くことを話してくれました。森先生は毎年、スペインを訪ねて、常に新しいフラメンコを観て、自分の技術や表現力に取り入れようとしています。教える立場になっても、いつまでも習うことを忘れないことはとても大事なことです。技術は常に進歩していますし、流行は常に動いているからです。これで良いと思った時には、技術の向上は停止してしまいます。
もうひとつは、本場の空気に触れることが大事だということです。フラメンコならスペインに行って現地の吹く風に触れる必要があります。恐らく、風、香り、情熱といった技術以外に必要な要素を、身体いっぱいで感じていると思うのです。
表面的には踊りの技術が大事ですが、内面から溢れ出る気迫や情熱は技術以外のものから来ているように思います。それは本場スペインでの舞台経験、本物との出会いから味わえる感動、優れたダンサーとの話し合い、フラメンコの文化を感じられる各地域を訪れてそこにある景色や料理を味わうこと、などが内面に取り込むことが大切だと思います。
内面から溢れ出るものがなければ、感動を与えることはできません。内面の表現力は、自ら体験し感動することによって身につくものです。
森先生の目的は、いつまでも瑞々しいフラメンコを自ら踊り、練習生に伝えることだと思います。そして自ら味わっている感動を、舞台を通じてお客さんに感じてもらうことを目指しているのだと思うのです。追求しても終わりがないものを、それでも追及している姿に感動します。森先生とはスペインから帰国した後に会うことになっています。どんな感動体験を内面から感じられるか、いまから楽しみにしています。