本日の建設委員会の視察は、仙台市の南側に位置する名取市役所を訪問しました。名取市は東北ですが雪が少なくて暮らし易い環境にあります。直近の東洋経済の調査による住み易さランキングでは813の都市の中で第4位になっています。平成27年の人口は約76千人ですが、東日本大震災直後は約72千人でした。震災後、人口が増加し続けていることが住み易い市であることを証明しています。
さて東日本大震災における名取市の被害は次のような状況です。
死者は923人、現在も遺体が発見されていない方は38名います。建物被害は全壊が2,801件を始め、一部損壊を含めて13,991件の住居被害が発生しています。そのため平成23年3月11日には避難所を52箇所設置し、11,233人が避難所生活を行い対応していました。そして平成27年9月28日現在の仮設住宅への入居は、1,034戸で2,152人となっています。
平成23年10月の状況は2,189戸で5,663人だったことから再興に向かっていることが分かります。
名取市の震災復興計画は平成23年度から平成32年度までの10年間としています。この中で再生期、展開期、発展期の7ヵ年計画を位置づけています。再生期は社会と経済基盤の再生。展開期は日々の生活の充実。発展期は新たな魅力の創造を目指しています。
そして暮らしと産業、まちの復興に関しても触れています。暮らしは、互いに支え合い強い絆で結ばれた暮らしを目指し、産業は地域資源と仙台空港を活用した集積と連携を図ることを目指しています。まちは多様な世代が未来を感じて安心して暮らせるまちを志向しています。これらの震災復興計画に基づいた災害に強いまちづくりを目指しています。
津波被害に遭った地域は二つに区分しています。海岸部に接した地域は住居を建設しない非住居区域と指定し、防災集団移転促進事業を行っています。この地域を名取市が買い取り、将来とも住宅は建設しません。このことは平成25年9月11日に防災集団移転促進事業の大臣同意を得ています。ただ名取市は水産業を中心に発展してきた市の歴史があるため市として水産加工業を継続する必要があります。そこでこの非住居区域に水産加工団地を再興し、地元水産加工会社三社が入ると共に、市外から三つの水産加工会社が入居することになっています。勿論、工場と住居は切り離すので、ここで働く人は生活面では津波被害から守れるようになっています。
その隣の地域は被災市街地復興土地区画整理事業地域として土地を嵩上げし、住宅地として再生させることにしています。
津波被害を受けた地域なので、思い切った移転と整理事業ができていると思います。この現場を視察すると津波被害の凄まじさが分かります。住居は流されて全くなくなっていて、ここに人が暮らしていたことを想像することは出来ないほどです。広大な更地となっているこの地域をこれから再興していく行政の役割は重大だと感じました。これほど何もないところからまちを再興することは容易ではないと感じますが、もし数年後、再びこの場所を訪れることがあるなら、新しい住宅が完成し暮らしやすい名取市での生活の様子を見ることができると思います。それは名取市の行政マンの熱意と行動力を感じられたからです。
市を動かすのは行政の役割ですから、それに関る行政マンの力が試されることになります。「そのうち」ではなくて「いまやるべきことをやる」ことが将来の市の再興につながります。現場に立った名取市の職員さんには、再興を果した将来の市の姿が映っていたように感じました。
仙台市と名取市の視察を終え、復興から再興に向かっている地域の生きる力の逞しさを感じることができました。