トリマーの世界大会で優勝し世界チャンピオンになった日本人が東京にいます。和歌山市にはペット用品のメーカーがあり、その会社の会長とご一緒した席で、参考になる話を聞かせてもらいました。
このメーカーでは他社と差異化を図るため独自の製品を開発していますが、改良を加えるに当たって一番大事なことは「お客さんの声を聞くこと」だと伝えてくれました。お客さんの声を聞いて製品開発や改良に反映させることがメーカーにとって最も大事なことなので、力を注いでいるのです。過日も東京からトリマーの世界チャンピオンを招いてユーザーの方達への講演と意見交換を行ったようです。
世界チャンピオンの意見を聞いて製品改良に取り入れることで、扱い易い製品や使い勝手の良い製品に仕上げることができています。トリマーにとっては、世界チャンピオンの意見を取り入れた製品は扱い易いものになるので改良を歓迎してくれています。現状に満足するのではなく、常に改良を加え続けていることが凄いことです。
またアメリカや中国にも進出を図っていることから、アメリカ仕様の製品なども製造していますし、英語や中国語を話せる人材を採用しています。職場では英語や中国語が飛び交い、市場拡大を目指した優れた企業へと成長しています。
このように一代で現在の優れた会社に育て上げた会長の話は、とても楽しくて役立つものです。
話は遡りますが、創業期は個人で商売を行っていました。小鳥の販売を行っていたのですが、小鳥が雛をたくさん産んだ時、近所の皆さんや友人にあげたそうです。善意でそうしたところ、雛を育てるための鳥の餌がいるので、餌が売れるようになったのです。そのことから商売のヒントを得たと話してくれました。まず市場を作り出すことで売り上げは後からついてくるということです。
その後、金魚の販売も手掛け事業は順調に伸びていきました。そして「やがて日本はペットブームが到来する」と確信を持ち、和歌山市の中心地に店舗を移転することになりました。そこで「しまった」という出来事がありました。近くに小鳥と金魚の販売をしている知り合いの店舗があったのです。その人の商売も店舗の場所も知っていたのですが、新規出店を急ぐ余り、先に新しい店舗用地を購入してしまったのです。
友人に喧嘩を売る訳にはいかないので、取り扱うものを変えることにしました。小鳥と金魚の販売を止めて、犬だけを取り扱うことにしたのです。それまでの顧客を失い新たな市場開拓が必要な決断になったのですが、近所の友人と競合することよりも新規分野に進出して共存を目指したのです。
その考え方が成功へとつながっていくことになります。予想したとおりペットブームが訪れたのです。ペットショップが少なかったことから犬が売れ始めたのです。犬がブームになっていったことから、犬の販売業界の秩序を作り始めました。命を取り扱うことですから、売れたら良いというものではありません。犬屋からペット産業へと転換を図っていったのです。
そして犬を販売するだけではなくて、毛のカットや犬の健康へ関心を向けるビジネスへと領域を広げていきました。そこから使いやすくて衛生的なペット用品を開発することになったのです。ペット販売からペット製品のメーカーへと変貌を遂げていきます。
徐々に現在の会社の形ができていくのですが、「時代と運が良かっただけですから、もう一度やれと言われてもできません」と謙遜していますが、時流を見つけ運があるという事業家に必要なものを持っていると思います。
苦労をして一代で会社を興し和歌山県からも表彰された経営者からの話は、とても興味深くて楽しいものでした。以前も見せてもらったのですが、「会社の展示場にも来て下さい。新しい製品がありますから」と再び誘っていただきました。人に話せる物語があることは成功の条件ですし、その物語には苦労と幸せが詰まっています。