新春にあたり阿弥陀寺の高木歓恒住職から卓話を聞かせてもらいました。最初に「恩を知るもの、人という」という言葉から始まりました。恩を知ること、恩を感じること。そして恩に報いること。これが人にとって大切な三恩です。恩とは恵みのことであり、恩恵とは人は恵みをいただいて生かされていることを指しています。
三恩に関してエルトゥールル号の歴史から伝えてくれました。今から125年前の1890 年9月16日、明治23年の出来事です。オスマントルコの軍艦であるエルトゥールル号が東京から神戸に立ち寄り、母国に帰る途中、台風の影響によって串本町沖で遭難しました。650人の乗組員の内、救助されたのはわずか69人でしたが、串本町の人々が見慣れていない外国人を救出したのです。当時はお米を食べられるのはお正月とお盆ぐらいで、日常生活はお芋を食していたようです。
遭難したのは9月ですからお米はなく、お芋も少ない時期でしたから、備蓄していたお芋とそれぞれの家で飼っていた大切な鶏を遭難したトルコ人に与えたのです。串本の村民は自分のことを後回しにしてトルコ人を助けたのです。
このときの日本人の心が後の歴史に影響を与えることになります。途中ですが、高木住職の話は臨場感があり、自分が体験して話をしているような迫力を感じさせてくれるものです。この迫力のある話には理由がありました。それは今日、私達に話をするため串本町に出向いて、遭難した場所など現地を視察してきたのです。現場を知って話をすることで迫力が出ます。現場を知らないで本を読んだだけで話をしても、聴く人達は迫力も臨場感も感じることはできません。歴史を知り現場を見てきたことから話をすることができるのです。
さて時代は変わって1985年、昭和60年に進みます。この当時、イランとイラクが戦争を始めることになり、イラクのフセイン大統領はテヘラン空港の閉鎖と、大統領宣言から48時間が経過した後にテヘラン上空を飛行する全ての飛行機を打ち落とすことを宣告しました。イラクに残された日本人は約200人いましたが、日本政府は危険がある限りテヘランに日本の航空機を派遣することをしないという判断を下しました。取り残された日本人を救ったのはトルコ航空機でした。野村トルコ大使がトルコ政府に日本人の救出を依頼し、また伊藤忠の森永氏がトルコのオザル大統領にテヘランに取り残された日本人の救助を依頼しました。
トルコ政府の判断は、日本人を救助するということでした。理由はエルトゥールル号の救助で日本人から受けたご恩を忘れていなかったからです。エルトゥールル号事件から100年の時を経て、今こそトルコ人が日本人にご恩を返す時が到来したと思って、トルコ航空機を日本人救出のためにテヘラン空港に派遣してくれたのです。
トルコ人が100年前に受けたご恩を忘れないでいたのは、トルコの小学生が教科書でエルトゥールル号事件のことを習っているからでした。全てのトルコ人は日本人から受けたご恩の歴史を知っているのです。受けたご恩は自分で返すべきですが、自分が返せなければ子どもの世代が返すこと。子どもの世代が返せなければ孫の世代が返すこと。そして孫の世代が返せなければひ孫の世代が返すことが、受けたご恩を返すことなのです。ご恩を忘れなければ歴史はつながれるのです。いつか受けたご恩を返すことを、恩送りといいます。自分が返せなかったご恩を送り、いつかご恩をお返しできるように送っていくことが人として大事なことなのです。
得てして、人はしてもらったことを忘れてしまいます。そしてしてあげたことを何時までも覚えているものです。でもこれは間違いで、してもらったことを忘れないようにすることが大事なことです。そして怒りや恨み、妬みはその場で忘れることが大事なことです。
ご恩は覚えておくべきことで、怒りや恨みはその場で忘れること。それが人とした大切なことで恩送りとつながっていきます。恩送りはいつか報いられることになります。
今回は、恩を知る、恩を感じる、恩に報いることの大切さをエルトゥールル号事件の歴史から教えてもらいました。日本人の歴史と今に生きる教訓をいただきました。
毎年開催している南龍会に参加しました。参加者は20人で、皆さんと楽しい時間を共有することができました。南龍会の皆さんには感謝していますし、これからも交流の機会を継続したいと思っています。会の冒頭に挨拶の機会をいただきましたので主旨を記します。
新年おめでとうございます。こうして今年も皆さんとお会いできることを嬉しく思っています。お顔を拝見させてもらうと思い出が蘇えってきます。最初に和歌山市議会議員に出た時に支えてもらった皆さん、その当時からOBとして支えてもらった皆さん、そして今支えてもらっている皆さんに感謝しています。あの時から厳しい戦いを続けていますが、今回も厳しい戦いとなっています。
ただ県議会に送り出してもらったことで、今の時代、少しでも皆さんのお役に立っているのではないかと思っています。社会は動いていますが、12年前には思いもしなかった事態が現在出現しています。それらの課題に対応できていると自負していますから、もしあの時の決断がなければ、皆さんから支持をいただき議会に送り出してもらえていなければ、私達の置かれた状況は今よりも悪くなっていると思っています。
当初自分が思っていた以上の責任と役割を担わせてもらっていると思っていますし、そのことを誇りに感じています。人は責任を与えられることでそれを全うしようと行動しますし、何もしないでいるよりも良い結果を出せるものだと信じています。
引き続きまして、皆さんと共に県政の課題解決に向かえるように挑戦していく所存ですので、皆さんからの強力なご支援をお願いするものです。今日は先輩の皆さんとの交流機会を楽しみにしています。最後までよろしくお願い申し上げます。
南龍会の皆さんとの交流の機会を楽しむことができました。南龍会の皆さんに感謝しています。