今日と明日の二日間は福井県への研修会に出掛けました。今日は大飯発電所の見学、明日は原子力保修訓練センターの見学という行程です。日本のエネルギー情勢について現地を見て学習することで考え方を整理したいと考えています。
大飯発電所は現在、地質調査を終え、順次津波対策を実施しているところです。これだけの津波対策を見て万全を喫していること、発電所業務に従事している人の意識の高さを感じることができます。現地に入ることで報道されていることとの比較、そして実際の現場の動きから言葉では伝わらない力を感じることができるのです。これは現場力ともいうべき感覚で、現場に立たないと感じることができない力です。
大飯発電所では原子力発電のしくみの中でも安全対策を中心に説明がありました。万が一の状況になった時は止めること、冷やすこと、閉じ込めることを行います。勿論、人が関与するものですが、人はミスを犯すものだという認識の下、安全サイドに進んでいく手順を取るようなしくみになっています。フェイルセイフやインターロックと呼ばれる安全対策で、人が作業ミスをしても間違った作業ではそれ以上進まない安全対策を意味しています。人と機械によるダブルチェックのしくみを施すことで、重大事故の防止に努めているのです。
また津波対策としては防潮堤の高さを5メートルから8メートルに嵩上げしていることやバックアップ電源の確保、免震棟の建設などを行っています。現場に入った時、消防訓練を行っていましたが、必要な行動の反復訓練と携わる人の意識を高める取り組みを行っていました。
いうまでもなく日本はエネルギー事情が脆弱です。エネルギーの自給率はわずか約4パーセントですから、石油危機やエネルギー資源の高騰があれば忽ち、経済活動も産業界も混乱することになります。勿論、私達の生活も混乱することは明らかです。日本では原子力基本法を制定して以降、国のエネルギーのバランスを採りながら多様化を進めてきました。
エネルギー危機は国の経済活動の興亡につながるものだからです。防衛とエネルギーの安定確保、外交は国が行うべき最高レベルの安全対策です。現在は防衛もエネルギーも外交も私達の関心事項になっています。私達がそこに意識を向けることで、私達の意見に沿った政策に向かうと思います。
民主主義国家において有権者の意思を無視して政治は進められないからです。3.11までは経済の陰の主役であったエネルギー問題も、今では国民である私達の関心事項となっています。原子力の再稼動をどうするのか。資源の乏しいわが国が将来のエネルギーの確保をどうするのかなど、現在の私達の生活と将来のわが国の繁栄につながる問題です。エネルギー問題を考えることは、国の将来を考えることだと思います。
実際に現地を見ることによって、課題を自分で考えることの大切さ、現場に立った感覚、皆さんとの意見交換などで知識も議論も深まります。現代の日本経済は製造業による輸出によって利益を得ていますから、国内での安定したエネルギーがあってこの産業構造は成り立っています。世界の中で日本の存在感が強いのは、優れた技術を持っていること、極めて優秀で誇りの高い国民性だと思います。高い技術も誇りも経済が安定していることも要因だと思います。貧しくて将来の展望が定まっていない国だとしたら、技術レベルの維持も誇りも保てないと思います。国が貧困になれば、能力による格差の拡大、治安の悪化などが発生することになります。豊かで平等な社会、安心で安全な生活環境を保つためにもエネルギー問題を考える必要があります。最大限の安全を確保したうえでの既存のエネルギーと再生可能エネルギーを組み合わせることによって、安定と品質の高い、そして安価なエネルギーを望みます。