委員会視察の最終日は富山市のコンパクトシティの取り組みでした。富山市神田副市長から説明を聞かせてもらいました。神田副市長は国土交通省から富山市に来ている人で、とても雄弁で感動的なまちづくりの話でした。
富山市は公共交通を軸としたコンパクトシティを目指しています。富山市は富山駅を中心にして放射状のネットワークを形成しています。そのため富山駅を拠点とした中心市街地に居住してもらうことと賑わい創出を目指しています。中でも富山市内の電車環状線化事業は一周しても20分で、一律200円、距離にして3.4kmの利便性の高い乗り物に仕上げています。富山駅から富山県庁や国際会議場などを巡るこのセントラムは多くの市民が利用しています。平成21年12月に開業して以来、利用者が増え続けています。その施策のひとつとして、富山市役所の職員証と富山大学の学生証にはセントラムが利用できるICチップが埋め込まれています。富山駅から富山大学行きのセントラムに学生証で乗車できるので利用者が増加しているようです。
これらの公共交通が整備されていることで沿線に住む人が増え始めました。公共交通の利便性が高くなければ、沿線に住むことで移動手段や時間短縮の面で利益を受けられますから良い循環となっています。また車を運転できない高齢者も公共交通であればまちなかに繰り出すことが可能です。高齢者がまちなかに出てくる機会も増えていると報告を聞かせてもらいました。
このまちなか居住推進事業として、決められた地域に居住すると共同住宅で100万円、一戸建て住宅で50万円の補助を富山市から受けられます。これもまちなか居住を後押しする要因となっています。
また公共交通が整備されても中心市街地に商店街などがなければ賑わいが創出できませんが、富山市では中心市街地にグランドプラザをオープンさせています。これは中心市街地再開発事業であり、富山市が地権者と協議を進めて富山市道と民有地を交換するなどして商業施設ビルと空間を開発したものです。まちなか居住と賑わい創出は同時に実施する必要がありますが、富山市はこの難しい仕事を見事に達成しています。
これらの事業が推進できている理由は強い意思と実行力にあります。やらなければならないという強い意思こそがまちを動かす推進力となっているのです。
この他にもまちなかには富山市が推進している事業を具体的に見ることが出来ます。自転車市民共同利用システムや花Tramモデル事業などがそれです。自転車共同利用システムは、中心市街地の17か所に設置された専用ステーションから自由に自転車を借りて任意のステーションに自転車を返却できるシステムです。自転車は170台、24時間、365日いつでも利用することができます。
また花Tramモデル事業は、花束を購入して市内電車に乗る人の運賃が無料になるという施策です。花束を持った人にまちなかを歩いてもらいたい、電車に乗ってもらいたいという思いを政策にしたものです。花で潤うまちを創出するための政策で、他の市では事例がないような取り組みです。
最後にコンパクトシティの効果を記します。市内電車の利用者が市内電車環状線の整備などを行ってから増加に転じています。また中心市街地への民間事業者による投資が増加し始めていますし、転入人口が増加し賑わいを創出しています。同じく児童数が16.6パーセントも増えていることから若い人たちが中心市街地に住み始めたことを表しています。
それに加えて大切なこととして、地価の下落に歯止めを掛けられ価格の維持ができています。平成19年度以降、富山県内の地価は下落していますが、富山市の環状線沿線の地価は維持できています。地価が維持上昇することで固定資産税が増加するので富山市の財政にも好影響を与え始めています。
富山市が取り組んでいるコンパクトシティは全国に誇れる事業だと思います。自信を持って説明している神田副市長の姿がまちの元気な姿を反映しています。本当に富山市はいいまちだと思います。人がまちの印象を決定する要素でもあるのです。
先進地の具体的事例を学べた委員会視察になりました。これからの和歌山県のまちづくり活動に活かせるものです。