活動報告・レポート
2014年9月4日(木)
視察二日日
命山
命山

視察の二日目は、浜松市が取り組んでいる津波避難対策を現地で調査しました。ひとつは津波避難マウンドです。これは市内に二箇所設置されています。通称命山と呼ばれているもので、津波から身を守るために海岸近くにマウントを造っています。遠州灘海浜公園では底面積60メートル、施設の高さ10.5メートル、海抜13.2メートルの頂上部分を造っています。頂上の平地部分の半径は18メートルで、約1,000人が避難できる場所になっています。

命山は小高い山のような形状で、万が一東海地震などによって津波が発生した時は、このマウントの頂上に避難することで命を守ることができます。この命山の斜面は緩やかなので、逃げる際には階段を利用しなくても直接斜面を駆け上がることが可能となっているので、少ない階段を求めてパニックになることはありません。

そして工法は盛土のため長期間の維持管理コストが安価に仕上がり、1000年に一度といわれる津波対策としては最適な手法のひとつだと言えます。普段は公園として浜松市の皆さんが利用しています。

命山

ところで命山にはトイレも物資も保管していません。その理由は災害から命を守るのは自分なので、何から何まで行政が用意するものではないからです。命を守るためには自覚が必要で、避難場所も食料も水も、懐中電灯も、トイレも全て行政が準備して、市民は何も防衛策を取らないでいることは良いことではないという考え方です。日常生活で防災対策を意識しなければ避難行動に移すことはできません。せめて津波からの避難に際しては食料と水、懐中電灯と簡易トイレ程度は持参して欲しいと思いますし、日頃からそれらの物資を備えることで防災意識を保てます。

浜松市民から「水も食料もトイレもない命山なので逃げ場所にはならない」という意見もあったようですが、「命を守るのは自分ですよ。行政の役割は市民の皆さんが命を守るための最低限の支援をすることです」と対応したようです。甘えていては命を守ることはできません。命を守るのは自分であり行政ではありません。

津波避難ビル

また東日本大震災の被災地視察から学んだことは、津波被害は海岸から2km以内の地域だということです。そのため浜松市では海岸から2kmの地域に津波避難ビル257箇所を設定しています。耐震性のある鉄筋コンクリート造り、また鉄骨鉄筋コンクリート造りで3階建て以上などの基準を満たしている小中学校や市営住宅などの公共施設を指定しています。また民間のマンションや社屋などを津波避難施設として浜松市と協定を締結しているビルがあります。公共施設は139箇所、民間施設は118箇所ですから、民間の協力も得ながら海岸から2km以内の地域の津波対策を実行しています。

防潮堤の整備
防潮堤の整備

続いて浜松市沿岸域防潮堤整備事業の現場を訪問しました。この沿岸整備は凄い事業です。事業延長は17.5kmで天竜川から浜名湖までの浜松市の海岸部の区間に防潮堤を設置しようとしています。この防潮堤を完成させると、宅地浸水面積は70パーセント低減することができ、宅地浸水深2メートル以上の範囲を97パーセント低減させることができます。

浜松市は海岸に面していることから津波の到達時間が短いこと、浜松市の人口と資産、主要な交通が集中していることから、この海岸に面した平野部分を守ることが浜松市を守ることになります。そこで防潮堤整備事業に着手しようとしています。

ところでこの整備資金ですが、創業者が浜松市出身の一条工務店グループからこの整備事業費として300億円の寄付があったことから事業化することができたものです。故郷を思う素晴らしい思いが防潮堤へとつながったのです。

この防潮堤はCSG工法が用いられています。防潮堤の高さは13メートル、土砂にセメントを加え固めた材料(CSG)を盛土して堤防にしています。CSGを挟むようにして盛土を施してその外側に松の木を植栽する計画です。CSG工法を活用した静岡モデルを先進事例として全国に発信したいと考えています。

この堤防の上に立ちましたが、CSGはコンクリートと同じように固くて崩れない工法だと感じました。

浜松市の津波対策はダイナミックで迅速、そして普段は公園として活用していることや景観に配慮している点が特徴です。先進地事例として参考になるものです。

静岡県
静岡県

静岡県を訪問し、住宅の耐震診断と補強対策について説明を受けました。自分の命は自分で守ることを目指した耐震補強を県民の皆さんに呼び掛けています。プロジェクト名はTOKAI-0で、東海地域の死者ゼロを目指すことと倒壊家屋ゼロを目指すことを掛け合わせたものです。平成25年度は約4,000軒の高齢者世帯を訪問して耐震補強を呼び掛けいますし、推進キャンペーンや静岡県地震防災センターへの工法の展示などを実施しています。

その結果、平成26年7月末時点で耐震診断を受けたのが71,681戸、補強計画を策定したのが20,482戸、耐震補強をしたのが18,000戸となっています。木造住宅の耐震に向けた成果は着実に表れています。