活動報告・レポート
2014年9月3日(水)
視察初日
名古屋大学減災連携研究センター
名古屋大学減災連携研究センター

和歌山県議会防災・国土強靭化対策特別委員会による視察に出掛けました。今日から三日間の視察となります。特別委員会では和歌山県の安心と安全につながる提案をしていますが、更に最近の知見を学ぶためにそれぞれの現地を訪問することにしています。

初日は名古屋大学減災連携研究センターを訪問しました。名古屋大学が東山キャンパスに免震構造の減災館を設立しています。このセンターは防災の研究と対応をすること、そして備えることの三つの使命を持って設立され、名古屋地域の活動拠点になっています。

名古屋大学減災連携研究センター

減災館の展示物は分かり易いことが特徴です。名古屋に東海地震による津波が襲ってきた時はどこが浸水地域となり、どの辺りが安全なのかを減災ギャラリーで分かり易く紹介してくれます。更に立体的な怖さも紹介してくれる展示物になっています。高層建築物は免震構造をとっていても、高層部の揺れが大きいので100パーセント安全とは言えないところもあるようです。地面の揺れと高層部の揺れを対比してくれる装置があるのですが、明らかに高層部の揺れが大きいのです。建物が安全だとしても室内対策を講じないことには圧迫や転倒によって生命が危険に晒されます。高い建物が決して安全とは言えないので、自分で生命を守ることが求められます。

また東海地震による津波によって、名古屋の中心市街地は被害が多大であると予測されています。そのため住宅地は周辺部に移ろうとしているようです。都会的感覚なら名古屋の中心部は土地の価値が高いので移転することは考え難いのですが、経済よりも将来に向けての安全を考えると転居という方法を考えるのが名古屋人だと説明してくれました。

名古屋の皆さんは、自らの生命を守るための安全を第一に考えての行動を取ろうとしているようです。減災ギャラリーでは浸水地域や各地域の震度などを明確に説明してくれます。正確な情報を提供することによって名古屋市民の行動を促すことも目的にしているように感じました。

最大の見せ場はこの建物全体を活用した振動実験です。屋上階に上り実験環境の整った部屋に入ると、建物内で揺れを経験することができます。建物内で揺れを体験できる施設は世界でこの建物だけです。振動を設定するとその揺れが建物内で体験できるのですから、本物の体験をすることができます。これには驚きましたし得難い体験となりました。

名古屋大学減災連携研究センターでは貴重な体験をさせていただきました。

スズキ株式会社
名古屋大学減災連携研究センター

続いて浜松市に移動しスズキ株式会社のスズキ歴史館を訪問しました。ここで企業としてのBCPの説明をしてもらいました。東海地震に備えて津波などの被害が想定されている危険地域の工場を安全の地域に移転させる計画があります。広大な工場を移転させることは資金や工場用地探し、そして現在の工場の今後の活用方法の検討など課題がたくさんありますから、経営者として大規模な移転は避けたいところです。

ところがスズキ株式会社は危険地域とされる工場を安全な場所へ移転させることを計画、実行しようとしています。既に用地は確保し工場を稼動しながら移転させる段階に入っています。BCPをここまで徹底している会社を訪問したのは初めてです。

この工場移転はスズキの鈴木会長兼社長の決断によるものですが、その理由は「今やらなければ100年後の従業員が、あの時代の経営者は何をしていたんだ、と思われるから」だそうです。東日本大震災を受けて東海地震の危険性が言われている中、経営者として従業員と会社を守る決断をすることが務めであると考えたのです。

歴史の評価に耐えられる仕事をしようとする鈴木会長兼社長の決断力は素晴らしいと思います。そして浜松市の経済と従業員の生命、そして地域における雇用の確保を守ることが企業の使命だと考えて、永続的発展を目指した経営をしています。

ところで現在の国道1号線はかつての東海道です。東海地震による津波被害の想定がされていますが、その地域は東海道から海側の地域となっていようです。つまり東海道から山側の地域は安全な場所になっているのです。江戸時代の人は東海地域の津波被害を受けるであろう地域を知っていたのです。その危険場所を避けるように東海道を主要道路としていた慧眼には恐れ入ります。

危険を忘れて東海道から海側に街を広げている現代人の驕りのようなものを感じました。自然の脅威は人が完全に防ぐことはできません。防ぐためには危険地域にいないことです。

企業がBCPとして危険地域の工場を移転させる計画は先人と同じように素晴らしいことです。先人から学び、優れた企業人から学ぶことが大切だと思います。