視察最終日は富山県立大学の視察を行いました。この視察目的は、同大学の卒業生の就職率が全国一であり、特に平成25年度は就職率100パーセントを誇っていることに関心を持ったことから、何故就職が厳しい時代において就職率を100パーセント達成できているのかを知りたいと考えてのことです。結論から言うと、訪問して就職のための取り組みがとても参考になりました。このようなやる気に満ちている県立大学であれば、持ちたいものだと思いました。
富山県立大学は理工系の大学です。設立は平成2年4月と新しいのですが、設立の経緯は、地元産業界から、理工系の人材を育成して欲しいと要望があったことがきっかけです。富山県はものづくりが生命線だそうです。ものづくりこそが富山県の生きる道であり、産業界から富山県に対して地元の人材を輩出するための県立大学設立の要望があったようです。それを受けて日本海側では初めてとなる工学系公立大学ができたのです。それから20年が経過し、現在では学生を約1,200名も抱える5学部の大学となりました。
教育の特色は少人数による行き届いた教育で、教員一人当たり学生数は約10人となっています。すべての学年において少人数ゼミを導入していることも特徴です。
さて就職率は、平成25年度は100パーセント、平成24年度は98パーセント、平成23年度は98.2パーセント、平成22年度は100パーセント、平成21年度も100パーセントになっています。ほぼ100パーセントの就職率を誇っています。
そこを目指していたのかという質問に対しては、就職率100パーセントを目指していたものではなく、当たり前のように学生指導をしている中で100パーセントを達成していたものであり、週刊誌などで報道されてから初めて、理工系大学の就職率が全国一であることに気付いたという答えでした。
ただし就職率100パーセントを達成している理由がありました。一年生の時からキャリア形成教育を実施していることです。
中でも企業の人事担当が作成している「大学生のキャリアデザイン」の冊子は特筆モノです。企業の人事の経験を約20年も持つ人がキャリア形成のスタッフとして大学に来てくれるようになりました。その人が「大学生のキャリアデザイン」の冊子を作成し、学生に対して4年間、指導をすることになっています。キャリア形成論は1年生と2年生の必修科目で、通算15回の講義を受けるカリキュラムになっています。冊子の内容は素晴らしいものですが、これに関しては改めて紹介いたします。
ここでは他の主な就職支援の取り組みを記します。
企業を知るための講義「シルモク」を開講していること。「シルモク」とは企業を知る木曜日の略で、木曜日に企業の広報や採用担当者を招いて学生に講義をしています。平成25年度の実績は14回、14社に来てもらっています。
進路ガイダンスは工学部3年生と大学院1年生を対象に年5回実施しています。他にも就職試験用のSPI試験対策講習とエントリーシート作成講習会の開催、模擬面接指導も実施しています。模擬面接では個別面接と集団面接を取り入れています。また学内合同企業説明会や学内公務員講座も実施しています。
就職情報を得るための「キャリアカフェ」も開設しています。就業力育成支援室という名称もあるように専門のスタッフが常駐し相談や対応をしています。
以上のような取り組みによって、就職率100パーセントを達成しているのです。実にきめ細かい、行き届いた指導をしています。
また同大学の先生は企業経験者が半数近くいることから、企業の採用の考え方などを知っているので学生の指導にも活かされているようです。企業が求める人材や欲する能力などを知っているので、ゼミや指導においても効果があると思います。
視察後に強い満足感を感じることができました。三日間を通して有意義な視察となり、平成26年9月議会一般質問で成果を反映させたいと考えています。
視察から帰ってから直ぐに議会報告会を行いました。今回は今日まで視察に行っていたことから、そこで学んだことを説明いたしました。
城下町金沢市に学ぶまちづくりについて。JR金沢駅の再開発に見習うJR和歌山駅を中心とした都市再開発について。万葉線をモデルとした貴志川線存続に向けた取り組みについて。以上の内容を中心とした議会報告会にしました。
JR金沢駅に関しては北陸で一番の都市であることから、福井市や富山市からJR金沢駅にお客さんを引っ張る力があります。JR金沢駅だけでショッピングと食事を楽しめますし、金沢駅に隣接している金沢フォーラスはファッションに特化したスペースとして女性客を集めています。JR金沢駅だけで一日楽しめるゾーンを形成しています。
JR和歌山駅に同じ機能を求めても無理だと思います。大阪市までの時間距離が近いことから、ショッピングゾーンを形成できたとしても、天王寺のハルカスや大阪駅や難波駅周辺のシッピングゾーンに勝てるようなものを配置しなければ、和歌山駅周辺にお客さんが来て賑わうことはありません。つまりJR和歌山駅周辺はショッピングゾーンで勝負することは無理だということです。でも金沢駅の集客の考え方は参考になります。ショッピングではなくて医療、福祉、託児所などを集めることで、それを必要とするお客さんを和歌山駅周辺に呼び込むことです。病院と託児所、そして高齢施設と居住施設をJR和歌山駅周辺配置することで人を集めることができます。今の時代、人口が減少している和歌山市内だけで集客しても賑わうことはありません。賑わうためには周辺の市から人に来てもらえるゾーンが必要となります。岩出市や紀の川市、海南市から和歌山駅周辺に来てもらうためにはそれらの市にないレベルの病院や医療機関、高層マンション、和歌山市内に通勤する女性のための託児所などを設置することが必要です。そして比較的元気な高齢者が居住できる福祉施設があれば入居者が買い物にも出掛けてくれます。また地元の産品を数多く取り扱うお店があれば買い物客は来てくれます。
居住とこれらの施設への訪問を目的とした人が交流する空間が出来ると、それに見合った商業施設もできますから賑わいは創出できると思います。JR和歌山駅周辺の賑わいを取り戻すためには、このような施策も考えたいところです。
また万葉線と貴志川線は良く似ています。延長は約16km、それまでの鉄道会社が撤退し、市が事業費を一部負担することによって第三セクターや後継事業者が事業を引き継いでいること、「ドラえもんトラム」や「たま電車」などの楽しい電車を運行していること、などが類似点です。ただそれだけで存続できるものではありませんから、市の中での位置づけを明確にすることが必要です。そうしないと、いずれ補助金の支出の是非論がでてくることになります。
通学用電車として不可欠な鉄道であることや、市の公共機能として鉄道があることの理解を得られることなどの周知徹底をする必要があります。またイベント電車を運行することで沿線以外の人にも利用してもらえる鉄道であることを訴えることも必要です。
廃線問題が再燃しないように、平成27年度末の補助制度見直しを議論する時は、地方鉄道の役割を明確に定義しておきたいところです。
以上のよう説明を行い議会報告会としました。まちづくりは関心事項なので、皆さんの役に立つことを期待しています。