強い雨が降る一日でした。紀州踊りが中止となったように屋外のイベントは開催中止となっています。そんな中、スナーダイクマエ孤児院絵画展に行ってきました。この絵画展開会の日の夕方から、協賛しているNPO法人青少年国際福祉教育協会総会にメアス博子さんに出席してもらい交流を行いましたが、本日が最終日であり、トークショーが開かれることから行ってきました。
トークショーはメアス博子さんと岩崎順子さんの二人です。同じ海南市出身というご縁もあってのことだと思いますが、二人の話に感動しました。
スナーダイクマエ孤児院はメアス博子さんが代表を務めていて小学生から高校生までの19名の子ども達を預かって育てています。孤児院に入所しているのは、虐待から保護された子どもや身寄りのない子ども達で、ここで共同生活をしながら学校教育を受けています。
メアスさんがカンボジアで孤児院を始めた時、子ども達の目は輝きがなく、嘘をつくことや、人を騙すこと、物を盗むことは当たり前の状態でした。貧しい国の子ども達の目がキラキラしているというのは誤りで、目がキラキラ輝くためには幸せな毎日を過ごすこと、愛情を持って接してもらうことが必要なのです。
設立した2000年から14年という長い時間を掛けて、ようやく孤児院で暮らす子ども達の目がキラキラ輝き始めたのです。開発途上国の子ども達の目が輝いているというのは幻想で、輝く目になるためには愛情を注ぐことや学校教育を受ける必要があるのです。
カンボジアの現状から始まった話は、岩崎さんのリードによって核心部分へと展開されていきました。
みんなが同居しているのだから共同生活の基本であるルールを守ることや協力する姿勢は当たり前だと思っていたのですが、子ども達は孤児院の運営など自分は関係ないという姿勢で、当初、共同生活は成り立たない状況だったようです。自分のことだけをする姿勢で、人の面倒を見るだとかみんなのためにという気持ちはなかったのです。
「それは違うよ」というところから子ども達への教育は始まり、人として社会で生きられる知識を増やしていきました。子どもは大人の影響を受けますから、家庭環境が良くなかったり、周囲の大人が堕落していると、子どの心も行動もそうなります。子どもは大人の心を写す鏡のような存在です。
今では朝起きて「おはよう」と言えるようになっています。「おはよう」と言えること、「おはよう」と言える相手がいることがどれだけ幸せなことかを確かめたいと思います。挨拶は人間関係の基本ですし、挨拶を交わすことで素敵な一日が始まりますから、「おはよう」と言えることが幸せへの第一歩です。
日本では当たり前のような光景がカンボジアの孤児院ではなかったのです。幸せを感じることができなかった子ども達を、幸せを感じるような子ども達へと、愛情を持って接することで成長させてきました。
ある時、日本人がカンボジアに旅行をした際、町で貧しい子ども達と会いました。この日本人は持っていたアメをあげようかどうしようか迷ったそうです。メアスさんに「アメをあげようか、どう接したら良いのか」と質問したところ、「あげたければあげたら良いですし、あげたくなければ、あげなくても良いです」と答えたそうです。これは本質で、日本のどこかの町で見知らぬ子どもに会ってもアメをあげようとは思いません。カンボジアでも同じで、特別なことをしなくても日常通りの接し方で良いのです。アメをあげることが愛情の印だと思えばあげたら良いことですし、アメをあげないことが将来に備えての愛情だと思えばあげなくて良いのです。
このように机上で考えるよりも、現地に行って感じることが大切なことです。現地で感じたことから学び、その価値観を基に実践することが支援につながるのです。何の行動も起こさないで支援することはできません。
それから1時間経過後、トークショーの最後に二人は素晴らしい行動を起こしてくれました。「ありがとうございました。私達は座っていたのに立って最後まで聞いてくれた方に感謝しています。そして今日、皆さんは自分の意思で会場に来てくれました。フェイスブックやブログなどでトークショーのことを発信しましたが、会場に行こうと思ったのは皆さんの意思によるものです。会場に来てくれなければ会うことはできなかった方ばかりです。今日のご縁に感謝しています」と椅子から立ち上がって挨拶をしてくれたのです。
清々しい行動に感動しました。岩崎さんの進行によってメアスさんはトークショーの終盤に涙を流しましたし、撮影していたカメラマンの方も涙を流していました。岩崎さんが対談相手の心を引き出す技術は素晴らしいと思います。